著者
小野 奈々
出版者
筑波大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

自然資源開発地域ですすむ環境破壊が深刻な状況にあることに着目し、そうした地域では環境保全意識がいかなる論理で受容されるか、ということを地域が急進的な環境NGOの活動を受容する論理から明らかにしようと努めた。またこの論理を「ライフスタイルの飛び地(Lifestyle enclave)」と「よそ者(Stranger)」を鍵概念に考察した。そしてここから「ライフスタイルの飛び地」や「よそ者」に象徴されるようなかたちで、将来や次世代の生活を考慮するような社会的利益を確保しようとする動きが地域社会にみられたこと。また、そのような独特の距離感をもちながら、生計をめぐる利己的な利害関係と対立するような価値(ここでは環境保全)を活かしていくために、NGOやNPOといった市民活動組織という存在が活用されていることを明らかにした。より具体的には、石資源を豊富に有し、その資源開発ブラジル連邦共和国ミナスジェライス州ゴウベイア市のなかで活動している環境NGO、カミーニョス・ダ・セーハを取材し、環境破壊につながる石資源開発で生計をたてているひとびとが多く住む地域の住民が、急進的な環境保全活動を展開する環境NGO、カミーニョス・ダ・セーハの活動を地域として受容していく論理を追った。そのさいこの環境NGOの活動が、当初の環境保全に加えて、地域発展を視野に入れていくという「目的の複数化」が生じていたという現象に着目し、それが生じていったプロセスを聞き取り調査で追いかけていくことで、この環境NGOを地域が受け入れてきたその論理には、将来や次世代の生活を考慮するような社会的利益を確保しようとするある種の価値観(まだ言葉にはなっていないが、今後詰めてこれを説明していく予定である)が基底にあることを明らかにした。この成果に関してはまだ学会発表、論文化にいたっていないが、近いうちに学会発表をし、随時、前年度の研究成果の結果とともに論文化していく予定である。
著者
小野 奈々
出版者
関東社会学会
雑誌
年報社会学論集 (ISSN:09194363)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.16, pp.102-113, 2003-06-13 (Released:2010-04-21)
参考文献数
18

This paper clarifies the relation between what I call “Simplified Ideology” and the formalization of NPO/NGO activities. This “Simplified Ideology” is a simplified form of an existing organizational ideology that NPO/NGO members employ whenever they encounter difficulties on the ground. As a matter of fact, the strict formalization of their activities, however, tends to result in a diminished capacity to answer quickly to the situation at hand. Then, in this paper, I will argue that an accurate use of the “Simplified Ideology” may help prevent such problems. The use of the “Simplified Ideology” may also contribute to the development of NPO/NGO's “creativity”, required to solve problems encountered in the field. In this regard, I analyze the activities of (1) Médecins Sans Frontieres (MSF) and (2) the Japan International Volunteer Center (JVC).