著者
小野 隆彦 片山 広之 鈴木 英男
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.91-95, 1988-02-01 (Released:2017-06-02)

本論文では、雑音に埋もれた周期信号の周期とパワースペクトルを検出する新しい方法として、クロススペクトルを用いた同期加算の方法を提案し、理論及び実験的検討を加えた。具体的には、本方法は雑音に埋もれた周期信号から、一定の時間遅れを持って2回信号をサンプリングし、この間のクロススペクトルを計算し、これを多数回同期加算するものである。また、本方法は、従来のトリガパルスを用いたパワースペクトル法と異なり、トリガパルスが不要である点にも一つの特徴を有している。理論的考察から、上述の方法で得たクロススペクトルは、周期信号のパワースペクトルに時間差と周波数の積に比例する位相の回転を与えたものと等しいことを導いた。次に、白色雑音に埋もれた2種の正弦波及び白色雑音に埋もれた短い周期のM系列信号から作成した周期雑音信号を対象として、実験的検証を行った。その結果、本方法は、雑音に埋もれた周期信号の周期及びパワースペクトルの精度よい検出に有効であることが分かった。