- 著者
-
小長井 ちづる
- 出版者
- 国際生命情報科学会
- 雑誌
- Journal of International Society of Life Information Science (ISSN:13419226)
- 巻号頁・発行日
- vol.24, no.1, pp.76-81, 2006-03-01
香りにはストレス緩和作用があることや気分をリフレッシュさせる効果があることが広く認められている.われわれは,これまでに,香りの脳機能に与える影響について,特に脳波の分析により評価してきた.今回は,加熱食品および嗜好飲料の香りについて検討した結果を中心に紹介する.食品の加熱や貯蔵中に起こる成分間反応として代表的なアミノ・カルボニル反応では,多くの香気成分が生成する.そこで,未加熱,浅煎り,中煎り,深煎りの加熱段階の異なる大豆および糖とアミノ酸を添加した加熱大豆とその対照加熱大豆を調製し,香りが脳機能に与える影響の差異を,α波を指標として検討した.中煎り大豆の場合には有意なα波の増大が見られ,また,アミノ酸と糖を添加して加熱した大豆はそわ対照大豆に比し有意にα波が多かった.ビールホップの香りの脳機能に対する影響について,濃度の影響および効果の性差を検討したところ,男性では,P300振幅については濃度間に有意な差が認められたが,女性では差がみられず,ホップに関しては男性の方が濃度の差に敏感であるという特徴的な結果が得ちれた.コーヒー豆の種類によるリラクセーション効果および認知機能に対する影響の差異については,豆の種類によってそれらの効果には差異があることが明らかとなった.この差異を利用し,目的に応じて豆の選択をすることによって,それらの効果をより効率良く得ることができると思われる.