著者
小関 友宏
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2015, 2016

【はじめに,目的】当法人リハ部門は104名在籍し,回復期リハ病棟における卒後5年以下の職員は,平成23年度では回復期リハ職員全体の69%,24年度では73%を占め,卒後教育が課題であった。この経緯を踏まえ,ISOなどで利用されるPDCAサイクルを適用し,25年度にリハ部内に教育課設立委員会を設置し,1年間かけて計画を行い,26年度に各課から独立した形で教育課が設立された。教育課の役割は,「卒後3年までの新人教育」,「プリセプター制度の管理」,「卒後4年以降の生涯教育」,「渉外業務」の4つに集約される。「卒後3年までの新人教育」では,社会スキル,知識スキル,技術スキル,研究スキルの4つのスキルに力を注ぐことで,リハビリテーション医療を理解し,他職種とのコミュニケーションが行え,社会人・医療人として相応しい人間性を確立させ,急性期・回復期・生活期のどの生活ステージにも対応できる育成を基礎としている。「プリセプター制度の管理」では,技術・臨床姿勢向上に向け,病棟巡回や治療介入を実施している。また,技能評価シートやフィードバックシートを導入し,定期的に自己・他者評価を実施し,コミュニケーションを密に取る仕組みとしている。「卒後4年以降の生涯教育」では,研究班による臨床研究活動を行っている。今回,1年の実践を経て,アンケートを行うことで確認評価し,教育システムについて,知見を得ることができたため報告する。【方法】リハ部の全職員92名を対象にアンケートを実施した。質問内容は,「新人教育」,「プリセプター制度」,「卒後4年以降の生涯教育」,「渉外業務」の有益性を調査した。回答は1~5段階評価(有益ではない~有益である)を用い,各項目には自由記載欄を設け詳細な理由を記述させた。新人教育を受けた職員にはそれに加えて「実際に受けてどうであったか」を調査,回答は1~5段階評価を用い,自由記載欄を設けた。各質問項目に対し4段階(まずまず有益である)以上の回答を肯定回答して集計し,自由記載欄はKJ法を用いて分類分析した。【結果】回答に欠損がないものを対象とし,回答率は93%であった。「新人教育」では,肯定回答率は82%であり,実際に受けている職員の評価も89%であった。「プリセプター制度」では肯定回答率は84%であり,実際に受けているプリセプティの評価も89%であった。「卒後4年以降の生涯教育」では83%,「渉外業務」では84%であった。【結論】新人教育やプリセプター制度では,相談する人が決まっていること,助言を受けやすい仕組みがあることによる安心感が高く評価されていた。生涯教育では,「業務時間外の活動であるため負担に感じる」という意見がある一方で,「勉強会や活動は多いけど,これだけ人数がいれば仕方ない」と意見もまた多かった。総じて,教育システムへの受け入れはよく,今回の意見を参考にし,より良いシステムにしていきたいと考える。
著者
小関 友宏 佐藤 剛 國家 全
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 第30回九州理学療法士・作業療法士合同学会 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
pp.37, 2008 (Released:2008-12-01)

【目的】 当院では,2004年より大腿骨頚部骨折クリニカルパス(以下CP)を導入し,一般病棟から回復期病棟入棟後も継続して運用している。また,医療機関の連携体制が評価されるようになった2006年からは地域連携パスも導入しており,他院から継続してCPを使用する頻度も増している。そこで今回,CP適応患者の現状を調査し,CP運用に影響する因子を検討したので報告する。【方法】 平成19年6月から平成20年3月までに当院に入院した大腿骨頚部骨折者で,当院で手術施行した35例,他院で手術施行した33例計68例のうち,受傷前ADLが車椅子レベルであった者、術後免荷期間が与えられた者,合併症により転科及び転棟した者を除く35例を対象とし,アウトカム達成した群19例(以下達成群)と,アウトカム達成できなかった逸脱群16例(以下逸脱群)に分類した。 当院CPは,後期高齢者が多い現状を考慮し,手術から回復期病棟入棟までを約1週,入棟から退院までを約12週と仮定し,アウトカムを約100日と設定している。 2群間で,年齢,手術から日中座位3時間の獲得日,手術から排泄動作自立日(ポータブル含む),手術から各歩行練習開始日までの平均日数の関係を比較検討した。統計的分析はt-検定を行い,危険率5%未満を有意水準とした。 【結果】 達成群・逸脱群の平均値をそれぞれ比較すると,年齢79歳・84歳(P<0.05),手術~平行棒内歩行9日・20日(P<0.01)手術~日中座位3時間獲得11日・22日(P<0.01),手術~排泄動作自立(ポータブル含む)26日・40日(P<0.05)であり,年齢,平行棒内歩行開始日,日中座位3時間獲得日,排泄動作自立日に関しては,2群間に有意差を認めた。 相関関係については,日中座位3時間獲得日が早ければ在院日数が短い(r=0.72),平行棒内歩行開始日が早ければ在院日数が短い(r=0.70),退院時の歩行が自立する日が早くなれば在院日数が短くなるという相関(r=0.81)をそれぞれ認めた。【考察】 今回の結果より,CPを予定通り実施していくためには,早期の日中座位保持時間の獲得と平行棒内歩行の開始の関与が示唆された。また,排泄動作の自立日の影響も認め,早期離床と早期荷重が,その後の歩行器歩行実施,排泄動作自立,病棟移動手段を車椅子から歩行へ移行,退院時歩行開始,というスムースな流れを作ることになり,結果として,在院日数の短縮へ結びつけると考える。今回の調査により,早期日中座位時間の獲得は,回復期病棟へのスムースなリハビリテーションの展開に寄与することが示唆された。回復期病棟入棟までの一般病棟において,日中座位時間3時間獲得し,平行棒内歩行を開始することは,重要な達成項目になってくるといえる。そのためには,一般病棟においても積極的な看護師との連携が不可欠であり,認識や理解の溝を埋める必要性は高く,チームのコンセンサスを得るためのツールとしても,パスは有用と思われる。