著者
尹 弘基
出版者
一般社団法人 人文地理学会
雑誌
人文地理 (ISSN:00187216)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.293-304, 2003
被引用文献数
5

本論文は, 過去20年間にわたって, オークランドにおけるそれまでの伝統的な文化景観に付け加えられるようになってきた, 東アジア系移民の創り出す広汎なエスニック景観の実態を明らかにしようと試みるものである。オークランドにおいて現在拡大しつつある東アジア系移民の文化景観を特徴づけるもっともはっきりと目に見える形で現れている兆候は, おそらく, 各エスニック集団における人口数それ自体の増加とともに, かれらの経営するエスニック・レストランの店舗数の増加に示されているといえるであろう。1992年以降, 10万人以上の東アジア系の人々がニュージーランドにおける在留許可を得ているが, その大部分は台湾, 香港, 中国からやってきた華人 (9万人以上) と韓国からやってきた韓国 (朝鮮) 人 (約1万4千人) である。1999年においては, 中国, 日本, 韓国, タイ, インドを含むアジア系エスニックのレストランの占める比率は, オークランド市におけるレストラン総数の50パーセント以上に達している。こうして新たに来住する東アジア系移民が, この間, オークランドにおける多文化的特徴を著しく拡張してきたのである。<br>こうして新しくやって来た東アジア系移民集団がもっとも強く選好している居住地域は, 相互に重複することはないし, しかもそれぞれの集団がオークランド郊外の相互に異なった場所を占める傾向を示している。すなわち, 台湾人はホーウィック=パクランガ, エプソム=レムエラ, チャッツウッド, 韓国人はイースト・コースト・ベイズ, グレンフィールド, 日本人はセント・ヘリアーズ, レムエラ=セント・ジョーンズ, フィリピン人はミスター・ロズキル, ヘンダーソン, ロイヤル・オーク=オネフンガ=エラーズリー, そしてヴェトナム人はマヌレワ, パパトエトエ, オタフフ, などに居住地域を形成するという具合である。