著者
尾崎 崇
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.57, no.6, pp.787-791, 2006-11-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

腎不全で特にBUN値の高い患者に対して大黄あるいは大黄含有方剤が有効であることが報告されている。しかし大黄は瀉下活性を有するために多量に投与しがたい。そこで筆者は瀉下活性を減少させる目的で加熱大黄を作成し, 腎不全患者に用いてみた。処理にあたっては高速液体クロマトグラフィーによるセンノサイドAの定量値を参考にした。第1例には100℃以下で4時間煎じた熱水処理大黄エキスを用いたが, 腎機能は改善しなかった。加熱により腎臓に対する保護作用も失ったものと推測された。第2例には130℃10分間の短期高熱で処理した乾熱処理大黄を用いたところ, 瀉下活性の著明な減弱により大黄として4g/日まで増量できただけでなく, 血液尿素窒素値 (BUN) の緩徐な低下を得た。その後BUN, 血清クレアチニン値 (Cr) が漸増したので, 温脾湯として投与を試みた。しかし, 温脾湯のエキス製剤はないので, 人参湯加大黄, 附子として投与したところ, 大黄単独よりより良い効果が得られた。乾熱処理大黄は瀉下作用が弱く窒素代謝改善作用は優れており, 今後は腎不全治療に使用が検討されるべきである。