- 著者
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尾木 研三
戸城 正浩
枇々木 規雄
- 出版者
- 公益社団法人 日本オペレーションズ・リサーチ学会
- 雑誌
- 日本オペレーションズ・リサーチ学会和文論文誌 (ISSN:13498940)
- 巻号頁・発行日
- vol.59, pp.134-159, 2016
<p>小企業向けの信用スコアリングモデルは,財務指標とデフォルトとの相関関係を利用したロジットモデルが主流である.ただ,小企業は大企業や中堅企業に比べて財務指標とデフォルトとの相関が低いため,モデルの精度も低くなるという問題がある.そこで,枇々木・尾木・戸城(2010)は,財務指標以外のファクターとして業歴に着目し,2004年度から2007年度の4年間に公庫が融資した約48万件の小規模な法人企業のデータを用いて業歴とデフォルトとの関係を分析した.その結果,業歴別のデフォルト率を3次関数で定式化した業歴関数をモデルの説明変数に追加すると,AR値が改善することを明らかにした.しかし,枇々木ら(2010)は,業歴別デフォルト率が何を表しているのかについては明らかにしていない.さらに,データ数が不十分で観測期間が短かったため,業歴関数の統計的な有意性や時系列での頑健性が確認されていないという問題点がある.そこで,本研究はこれらの問題点を解決するため,観測期間を8年に延ばしたうえ,約100万件の法人企業のデータに加えて約32万件の個人企業のデータを使用して分析を行った.膨大なデータをさまざまな角度から分析した結果,業歴別デフォルト率は経営者の個人資産額と関連があり,その代理変数として利用可能であることを明らかにした.さらに,業歴関数の統計的な有意性と時系列での頑健性を確認し,枇々木ら(2010)の分析に比べて実務での汎用性を高めることができた.</p>