著者
上山 俊輔 尾関 全
出版者
日本保険医学会
雑誌
日本保険医学会誌 (ISSN:0301262X)
巻号頁・発行日
vol.111, no.2, pp.122-130, 2013-06-28

現在,脂質異常症の管理目標値には年齢,性別,LDL-C値,血圧,喫煙など冠動脈リスク評価が用いられ,特に閉経前女性において,冠動脈リスクが低いという性差を反映したものに変わりつつある。今回,LDL-C値が冠動脈疾患の入院給付や死亡指数に与える影響の性差を検討した。LDL-C値の分布では,女性は30代,40代のピークが低くなり,男性より遅れて上昇する傾向がみられた。LDL-C値と冠動脈疾患入院給付発生率では,男性はLDL-C値や年齢が上がるにつれて発生率も上昇した。一方,女性においては発生率の上昇は明らかではなく,発生率自体も男性の約4分の1程度であった。死亡指数比では男性はLDL-C値が120-149mg/dlで最も低くなり,LDL-C値が上昇,または低下しても死亡指数比が上昇した。女性ではLDL-C値が上昇しても死亡指数比は上昇しなかった。今回の検討より,冠動脈疾患入院給付率や死亡指数において明確な男女差がみられ,査定においても女性は大幅に緩和する余地があると考えられた。
著者
町田 竜也 松岡 陽 小林 秀一郎 尾関 全 石坂 和博 岡 輝明
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.257-259, 2003-05

33歳男.会陰部腫瘤,歩行困難を主訴とした.4年前よりの会陰部腫瘤が徐々に増大し,歩行困難と坐位圧迫での疼痛をきたした.会陰部中央に小児頭大の腫瘍を認め,骨盤部MRIで壁の薄い嚢胞状腫瘤を認めた.内部は均一で,T1強調像にて低信号,T2強調像にて高信号を示し,液体成分と考えられた.骨盤内への浸潤や尿道,直腸との交通はなかった.会陰部の嚢胞状腫瘍の診断で腰痛麻酔下に腫瘍摘出術を施行した.嚢腫は球尿道海綿体筋を挟んで尿道とは離れていた.浸潤所見はなく完全摘除され,術後1年経過で再発も認めない.病理組織学的所見では内面は角化重層扁平上皮で覆われ,内腔に角化物質を多量に含んでいた.皮膚付属器や皮膚以外の組織は認められず,悪性所見も認められなかったためepidermal cystと診断された.会陰部のepidermal cystは稀で,自験例を含め本邦では6例の報告があるのみであった