著者
竹内 明禅 中村 勝徳 中村 裕樹 屋部 大輔 北 義一 迫田 馨 久米田 高宏 八反丸 健二
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A0181, 2004 (Released:2004-04-23)

【はじめに】 これまで足関節運動時における遠位脛腓関節(以下、遠位関節)についての文献はみられるが、近位脛腓関節(以下、近位関節)における足関節肢位の変化に伴う矢状・水平面での腓骨変位を定量的に分析しているものは少ない。 今回、健常人の足関節自動底背屈運動に伴う近位関節に着目し、CTを用い上下・前後・水平方向の腓骨変位を定量的に計測し、若干の知見を得たので報告する。【対象・方法】 下腿及び足関節周囲に既往のない健常人男性15名、検肢右側9肢・左側6肢、平均年齢25.8±2.99歳を対象とした。 1)CTは東芝社製X-VISION TSX-002Aを用い被験者を撮影台に背臥位にして膝関節完全伸展位で行った。そして、スポンジで大腿部を固定し、我々が作製した固定器具で下腿の回旋の防止に配慮した。尚、被験者にはあらかじめ被爆による身体への影響を説明し、承諾を得た。また、撮影に関しては当院の診療放射線技師が実施した。2)足関節の肢位は、最大自動背屈(以下、背屈11.3±5.6度)・中間位・最大自動底屈(以下、底屈48.8±9.3度)とし、腓骨変位量の計測は、中間位を基準とし、a上下方向:外側顆間結節を結ぶ水平線―腓骨頭尖距離b前後方向:脛骨粗面―腓骨頭尖距離c水平方向:内・外側顆後縁を結ぶ線に対しての腓骨頭隆起部と腓骨後面隆起部を結ぶ角度をPC上で行った。【結果】 1)腓骨上下方向の変位は全体の85.7%において底背屈共に上方へ移動し、変位量は上方方向を正とした場合、背屈0.29±0.77mm、底屈0.77±0.59mmとなった。2)腓骨前後方向の変位は92.9%において背屈時には後方へ、底屈時には前方へ移動し、変位量は前方方向を正とした場合、背屈-1.68±1.56mm、底屈1.89±1.43mmとなった。3)腓骨回旋方向の変位は85.7%において背屈時に外旋、底屈時には内旋方向へ移動し、変位量は内旋方向を正とした場合、背屈-1.95±4.2度、底屈3.97±3.33度となった。【考察】 今回、近位関節における足関節自動運動での腓骨変位方向及び変位量が判明した。上下方向では、底背屈時に腓骨が上方変位する傾向として、大腿二頭筋の収縮作用又は遠位関節の形状による突き上げ作用によるものか判断出来なかった。また、前後の移動が必然的に腓骨の転がりをも生じるというKelikianの報告と同様の結果となり水平方向と深い関連があることが分かった。次にJendによる遠位関節での腓骨変位量より近位関節の変位量が大きくなった要因として、腓骨の形状から考慮すると遠位部よりも近位部のほうが骨・関節面が小さい為だと考える。このことから足関節自動底背屈の際には近位関節にも付随した運動が生じ、この関節は足関節と機構的に連結していることが実証された。今後、足関節の疾患に対して遠位関節のみでなく、骨運動的に近位関節も考慮し運動療法を進めていく必要があると考える。