- 著者
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隈元 庸夫
伊藤 俊一
- 出版者
- 公益社団法人 日本理学療法士協会
- 雑誌
- 理学療法学Supplement Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
- 巻号頁・発行日
- pp.A0243, 2004 (Released:2004-04-23)
【はじめに】 大腿四頭筋の中で内側広筋は特に萎縮しやすく,筋力増強運動に対する反応も遅く,回復しにくい筋といわれている.このため,内側広筋の選択的なトレーニング法確立のため様々な検討がなされており,大内転筋活動を伴った股関節内転運動を行うことが重要とされている.下肢疾患者や臥床者に対する大腿四頭筋の簡便なトレーニング法として,patella setting(PS)は臨床で広く行われている. PSについては多くの報告があり,股関節回旋位に関する検討も散見されるが,いずれも股関節屈曲位や長座位での報告であり,一般に臨床で行われることが多い背臥位でのPS施行における,股関節回旋位の違いによる内側広筋の筋活動を検討した報告はない. 本報告の目的は,背臥位PS時の股関節回旋位の違いが内側広筋の筋活動に及ぼす影響を筋電図学的に検討し,内側広筋のより効果的トレーニング法確立のための一助を得ることである.【対象と方法】 対象は,下肢に整形外科的疾患の既往のない健常者20名とした.測定肢位は背臥位とし,PSは測定下肢のみ施行させた.PSの施行は,股関節内外旋中間位,内旋位,外旋位の3肢位とした.筋電測定には,アニマ社製ホルター筋電計MM-1100を用いた.導出筋は,内側広筋(VM),外側広筋(VL),大腿直筋,大内転筋(AM)とした.各筋の筋活動量は,股関節内外旋中間位でのPS施行時の平均積分筋電値を100%とし,外旋位と内旋位での値を各々正規化し%平均積分筋電値を算出し,これを筋活動量とした.検討項目は,(1)各導出筋の筋活動量,(2)VMとVLの筋活動量の比率値(VM/VL),(3)VMとAMの筋活動量の相関,(4)AMの筋活動量変化によるVMの筋活動量変化に関して,各々外旋位と内旋位について比較検討した.統計学的処理は(1)(2)はWilcoxon t-test,(3)はSpearmanの相関係数,(4)Kruskal-Wallis H-test 後post hoc testとして,Mann-Whitney U-test with Bonferroni correctionにて検定し,有意水準を5%未満とした.【結果と考察】 内旋位と比較し,外旋位においてVMの筋活動量の有意な増加を認めた.VM/VLに関しては,股関節内旋位・外旋位の違いによる有意差は認められなかった.VMとAMの筋活動量の相関については,外旋位では正の相関を認めたのに対し,内旋位では相関を認めなかった.AMの筋活動量変化によるVMの筋活動量変化は,外旋位でAMの筋活動量が増加した群が最も,VMの筋活動量が増加した. Cernyは長座位におけるPSの筋活動を検討し,筋活動もVM/VLも股関節回旋位による有意な差はなかったとしている.しかし,今回の結果から背臥位でのPS時には股関節外旋位で内転筋の収縮を意識することが,VMの筋活動に対してより有効となると考えられた.