著者
山中 真人
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

素粒子物理・宇宙物理には説明困難な問題が残されており、それに伴い標準模型を超える模型が多数提唱されてきた。本研究の目的として、【標準模型を超える新模型の特定】、並びに、【その新模型が持つパラメーター値の決定】の2点を掲げる。本研究では、目的達成に向け、宇宙論的観測量と理論予測の整合性を課すことで直接的に、また、レプトンフレーバー数非保存過程に関する実験結果と理論予測の整合性の観点から間接的に攻めてきた。さらに、LHCにおける各模型の特徴的信号についても議論してきた。こういった統合的かっ相補的アプローチにより、異なる模型がもたらす同一実験結果が招く混乱等を回避し、新模型のパラメーター値の決定や、模型の確立を進めた。2009年度に行なった研究は、大きく分けて2つである。1つ目は、昨年末、CDMS実験により報告された暗黒物質の直接検出と思われるシグナルに応じた研究である。研究を通じ、CDMS実験の結果が超対称性模型、及び、模型における暗黒物質の性質にもたらす示唆を明らかにした。2つ目は、荷電レプトンフレーバー数非保存過程を通じた、標準模型を超える模型の探索である。我々は、荷電レプトンフレーバー数非保存を伴い、かつ、将来実験で十分な精度をもたらすことができる新たな反応【ミューオニック原子中におけるmu^-e^-->e^-e^-】を提案した。本反応の探索実験の実現化へ向け、今後も研究を進めていく予定である。