著者
杉山 真二 渡邊 眞紀子 山元 希里
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.361-373, 2002-10-01 (Released:2009-08-21)
参考文献数
48
被引用文献数
6 6

九州南部に分布する多数のテフラを時間の指標として,最終氷期以降における黒ボク土の分布とその変遷について検討した.その結果,九州南部では約29,000年前から約13,000年前までの最終氷期においても黒ボク土が形成されており,その分布は現在と同様か,より広域であった可能性が認められた.その後,約8,400年前にかけても,広域に黒ボク土が分布していたと考えられるが,約7,300年前には黒ボク土の分布が縮小し,種子島を含む鹿児島県域では黒ボク土がほとんどみられなくなったと推定される.これは,おもに照葉樹林の分布拡大の影響と考えられる.歴史時代には再び黒ボク土の分布が拡大したが,現在では縮小・衰退傾向にあると推定される.これは,農耕地の拡大などによるイネ科草原植生の減少の影響と考えられる.黒ボク土の有機物の給源植物は層準で異なっており,最終氷期はクマザサ属Sasa,完新世以降はススキ属Miscanthusやメダケ属ネザサ節Pleioblastus sect. Nezasaが主体であったと推定される.