著者
花木 昭 伊古田 暢夫 本野 和彦 山内 脩
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1988, no.4, pp.578-584, 1988-04-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
34

2個のロイシン(Leu)残基と,1個のグリシン(Gly)残基をもつトリペプチドジアステレマーの銅(II)錯体生成における立体選択を電位差滴定で,錯体における側鎖の相互作用を円偏光二色(CD)法を用いて研究した。側鎖をもつアミノ酸残基が隣りあうペプチド,Leu-Leu-Gly,Gly-Leu-Leuの錯体の安定度定数は,側鎖の相互配置によって異なる。側鎖がキレート平面の同じ側にくるL,L-錯体の方が側鎖が反対側にあるL,D-(およびD,L-)錯体より安定度(錯体形成の選択性)が高い。Leu-Gly-LeuではL,L-錯体とL,D-(およびD,L-)錯体の安定度定数は等しかった。側鎖の相互作用はCD強度(Δ ε)の相加牲から検討した。側鎖の相互配置の差が錯形成能に影響しないLeu-Gly-Leuでは,L,L-錯体のΔ εはL-Leu-Gly-Gly錯体とGly-Gly-L-Leu錯体のΔ ε の和に等しく,L,D-錯体ではL-Leu-Gly-Gly,Gly-Gly-D-Leu錯体のΔ ε の和に等しかった。その他のペプチドでは,L,L-異性体を配位子とした錯体においてのみ相加性は成立した。Δ ε 相加性の基本条件は錯体の基本骨格(平面性)の保持である。L,D-錯体で相加性が成立しない理由として,側鎖同志,または側鎖と配位水との相互作用による錯体の基本構造のひずみが考えられる。
著者
山内 脩 小谷 明
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1988, no.4, pp.369-382, 1988-04-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
68
被引用文献数
11

生体系の金属イオンにはタンパグ質に組み込まれて存在するものや低分子錯体として存在するものなどがあり,それぞれなんらかの存在理由をもっている。モデル低分子錯体の挙動を明らかにすることは,生体系低分子錯体の挙動はもとより金属イオンと一般の生体物質との相互作用の様式と役割を理解する基本となるとともに,未知の錯体の存在やその機能を示唆することにもなるであろう。アミノ酸,ペプチドの錯形成反応より,低分子混合配位子錯体に鞍いて静電的相互作用,水素結合,あるいは芳香環スタッキングという弱い相互作用が配位子間に起こりうることが明らかとなった。また,DNAインターカレーターであるいくつかの芳香環含有白金(II)錯体とモノヌクレオチドとの間で希薄水溶液中安定な会合体が形成されることから,これをモデルとして核酸の関与する非共有結合性相互作用のエネルギーに関する知見を得た。