著者
一田 利道 冨山 望 田村 仁美 永野 茂紀 藤田 邦彦 山口 和憲
出版者
九州歯科学会
雑誌
九州齒科學會雜誌 : Kyushu-Shika-Gakkai-zasshi (ISSN:03686833)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.201-207, 2002-10-25
参考文献数
12

体位の変化により下顎位が前後的に移動することは知られているが, それに伴う下顎位の変化が咬頭嵌合位の咬合接触状態に及ぼす影響を数量化したものは少ない.今回の研究では, 体位の変化に伴う下顎位の相違が, 咬合力や咬合接触関係に及ぼす影響について, 咬合力測定システムを用いて, 定量的に検討することを目的とした.顎関節症状や咬頭を被覆するような補綴物がなく, 第3大臼歯以外に欠如歯がない, OverjetおよびOverbiteが2∿4mmの良好な咬合を有する本学学生男性10名, 女性13名, それぞれの平均年齢 : 25歳4ヶ月, 23歳3ヶ月, 年齢幅 : 22歳11ヶ月∿28歳3ヶ月, 19歳3ヶ月∿31歳5ヶ月の計23名を対象とした.計測に当っては内容をよく理解してもらい同意を得た.咬合力測定システム用プレスケールの内からDental prescale 50H R typeを用い, 座位における自然頭位と, 水平位において仰臥位で被験者がリラックスした頭位で, 2秒間の最大咬みしめを1回ずつ行った.同様に日を変えて一人につき計3日間の計測を行った.データは専用測定器Occluzer FPD 703により解析し, 25MPaから120MPaの範囲で体位別の咬合状態を数値化し, 統計処理を行った.その結果, 咬合力, 咬合接触面積, 平均咬合圧, 咬合バランスについては有意な個人差があり, 日を変えて測定しても座位, 水平位間に有意差は認められなかった.以上より, 良好な咬合を有する成人では計測値に個人差はあるが, 座位, 水平位間で咬合力や咬合接触関係に有意な差が見いだせないことから, 頭位に影響を受けず咬合が安定していることが示唆された.