著者
山口 猛
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.21-34, 1995-02-15 (Released:2011-08-10)
参考文献数
32
被引用文献数
1

鼻閉及び鼻閉感の原因を追求する目的で, 諸条件の許に乾燥空気を鼻腔内に与えることにより, 鼻腔内湿度変化に伴う鼻腔抵抗値の変化から双方の関与を検索し, また, 高齢者における鼻腔機能を青壮年者と比較検討し, 加えて高齢者における鼻閉感と鼻腔内乾燥との関連をも併せて検討した。(1) 青壮年群における鼻内の乾燥化は, 鼻腔内湿度の低下・鼻腔抵抗値の増大・粘液繊毛機能の低下を惹起し, 自覚的には鼻閉感を生じさせる。その原因と推察できるものとして, 粘膜表面の摩擦抵抗の増大あるいは乱流の発生を推定した。(2) 高齢者においては, 青壮年群と比較し, 鼻腔内湿度の低下・鼻腔抵抗値の減少が確認された。また鼻腔内湿度が増加すると抵抗値が減少することを認め, 同時に鼻閉感といった症状の改善が認められた。(3) 高齢者における加湿後の鼻腔抵抗値の減少の要因として, 粘膜表面の摩擦抵抗の減少および乱流発生の抑制などが推察された。(4) 鼻腔形態不良を伴わない高齢者の鼻閉,鼻閉感の治療にあたっては, 鼻粘膜の乾燥を是正することが有用と認められた。
著者
山口 猛央 高羽 洋允 酒井 康行 中尾 真一
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

生体膜ではイオンゲートが存在し、イオンシグナルが来たときにだけ細孔を開閉する。情報伝達シグナルにより細胞内外の特定イオンや物質の濃度を調節することが可能である。人工膜中にセンサー(包接ホスト)やアクチュエーター(環境応答ゲル)を組み合わせ、シグナルを認識したときにだけ細孔を高速に開閉する分子認識イオンゲート膜の開発に成功している。この膜はカリウムなど特定イオンが来たときにだけポリマー鎖が細孔内で膨潤し細孔を閉じる機能を有する。本研究では、この情報シグナル認識機能を人工代謝機能へと応用した新規なハイブリッド型人工臓器を提案する。情報認識膜の表面に細胞を成長させる。細胞の一部が死滅すると全体の細胞へ悪影響を与え(生体では炎症など)、機能を維持できない。多くの細胞はカリウムポンプにより細胞内でカリウム濃度が高い状態を維持している。通常、細胞内部でのカリウムイオン濃度は4000ppmであり、血漿中の濃度は200ppmである。細胞が死滅すると細胞膜が破壊されカリウムイオンが外部へ流れ出す。膜がこの情報物質を認識し死滅細胞近辺だけポリマー鎖が膨潤し親水化すると、死滅細胞近辺の細胞が表面から剥がれる。さらに膜細孔も閉じ細胞質は透過側へは流れでない。拡散によりカリウムイオン濃度が低下するとポリマー鎖は収縮し、初めの状態と同じように細胞が増殖し細胞組織を再構成する。これを繰り返すことにより、常に組織は新しい細胞と代謝され、長期間機能を維持する。生体においては、食細胞などにより細胞が消化され代謝が促進されているが、ここでは人工膜界面が細胞死の情報を認識し代謝する役割を担う。死細胞から放出されたカリウムイオンを膜が認識し、死細胞を選択的に系から除去できることを確認した。さらに、炎症性物資をも除去することにより、このシステムでは素早く細胞が復元されることも確認した。