著者
山城 彩子 太田 英利
出版者
日本爬虫両棲類学会
雑誌
爬虫両棲類学雑誌 (ISSN:02853191)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.152-155, 1998-12-30 (Released:2009-03-27)
参考文献数
14
被引用文献数
3

単為生殖のヤモリであるオガサワラヤモリLepidodactylus lugubrisの雄型個体が,琉球列島の石垣島から発見された.この“雄”は,よく発達したヘミペニス,前肛大腿孔,外見的には正常な精巣をもっていた.しかし,生殖腺の組織切片を観察してみると,精巣内における精子形成は不完全で,成熟した精子は精巣上体中にほとんど観察されなかった.したがって,この“雄”は生殖能力がないと考えられる.石垣島や,隣接する島嶼には両性生殖する同属種が存在しないことから,この雄型個体が,南太平洋の島々の個体群で報告されているような,雌のオガサワラヤモリと同属の両性の雄の間での交雑や,後者の同定ミスに由来するとは考えられない.