- 著者
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疋田 努
太田 英利
- 出版者
- 京都大学
- 雑誌
- 一般研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 1995
台湾から琉球列島にかけて分布するアオスジトカゲ、イシガキトカゲ、オキナワトカゲの3種は小さい島々にまで広く分布し、種内の形態的な変異も知られている。泳動データからは,これら3種のうち八重山諸島のイシガキトカゲは台湾のアオスジトカゲよりも,沖縄諸島,奄美諸島のオキナワトカゲにより近縁であることが,示された.従来,八重山諸島の動物相は,沖縄諸島よりもむしろ台湾のものに近いと考えれており,この結果はこの地域の生物地理をどのように考えるかに大きな影響を与えるものとなった.また,トカラ列島の中之島,諏訪之瀬島,口之島からには,ニホントカゲ分布すると考えられていたが,これらがむしろオキナワトカゲに近いことが明らかとなった.それぞれの種内でも,島毎に大きな変異が認められた.まず,アオスジトカゲでは,尖閣列島の集団が台湾のものと大きく異なることがが示された.つぎにイシガキトカゲでは波照間島のものが他の八重山諸島のものと異なっていることがわかった.オキナワトカゲ集団は,従来基亜種のオキナワトカゲと奄美諸島亜種のオオシマトカゲに分けられてきたが,その地理的変異はもっと複雑で,さらに細分する必要があることが示された.形態的な形質では,とくに体色や模様の変異が認められ,体鱗列数等の計数形質にも地理的変異が認められた.しかし,これらの形態的な違いは変異の重なりがかなりあり,十分な識別形質とはならなかったが,島毎の傾向が明らかとなった.