- 著者
-
松井 正文
- 出版者
- 日本爬虫両棲類学会
- 雑誌
- 爬虫両棲類学雑誌 (ISSN:02853191)
- 巻号頁・発行日
- vol.12, no.2, pp.50-64, 1987-12-15 (Released:2009-03-27)
- 参考文献数
- 19
- 被引用文献数
-
27
近畿地方以北に分布するカスミサンショウウオ-トウホクサンショウウオ複合群244個体のアイソザイムについて,デンプンゲル電気泳動法を用い,17遺伝子座における変異を調べた。これまでに命名されていた6種(トウホク,クロ,ホクリク,アベ,トウキョウ,カスミ)は比較的小さなNeiの遺伝的距離(2種個体群間距離の平均の最小値=0.22)によって,たがいに明瞭に区別された。しかし,これらの種間にみられた遺伝的な関係と,これまで認められてきた系統関係との間には大きな不一致があった。白馬村産のサンショウウオ個体群は,他のすでに命名されている種と比較した場合に,独立種として認めるに足るほどの大きな遺伝的相違を示した。この結果にもとづいて,白馬村産の個体群を新種ハクバサンショウウオとして記載する。この種は中部地方飛騨山脈に含まれる,長野県の山地帯に分布する。カスミサンショウウオ-トウホクサンショウウオ複合群に属し,鋤骨歯列が浅いこと,鋤骨歯数が少ないこと,トウホクとカスミの中間的体型をもつこと,卵嚢外被に縦条を欠くこと,独特のアイソザイム泳動パターンをもつこと,で特徴づけられる。