著者
山岡 沙織 力丸 裕
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SP, 音声 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.471, pp.55-59, 2012-03-01
参考文献数
5

先行研究によってSpatial-Musical Association of Response Codes (SMARC)効果が報告されている。これは、ピッチ比較課題において高音と右、低音と左の結びつきの場合は、その逆で高音と左、低音と右の結びつきの場合よりもより反応時間が短く、またより正確であるという現象である。しかし、この現象が先天的現象なのか後天的現象なのか、またそのしくみについても明らかになっていない。そこで、まず行動実験によりSMARC効果を実証し、SMARC効果が音楽経験に依存するのかを調べた。被験者は学生25人(音楽経験者16人、音楽非経験者9人)である。被験者は2種類のトーンバースト(参照音:523Hz,プローブ音:330, 370, 415, 466, 587, 659, 739, 831Hz)のピッチ比較をし、プローブ音の方が高い場合は右もしくは上を低い場合は左もしくは下のボタンを押す課題と、またその逆で高い場合に左もしくは下を低い場合に対して右もしくは上のボタンを押す課題が与えられた。プローブ音を聞いてからボタンを押すまでの反応時間を測定した結果、SMARC効果の強さには個人差が見られたが現象は確認された。しかし、音楽経験とSMARC効果の間には強い相関は得られず、SMARC効果が音楽経験に依存するとは言えないことが分かった。さらに、高さの異なる2種類のトーンバースト聴取時の脳活動をfMRIで撮像した結果、被験者14人に共通して活動が見られた前帯状皮質と行動実験において計測したSMARC効果の強さに負の相関が見られた。