著者
野呂 幾久子 邑本 俊亮 山岡 章浩
出版者
The Japanese Society for Cognitive Psychology
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.81-93, 2012

本研究は,IC口頭説明場面における患者の理解,情緒,意思決定に,医師の説明表現のわかりやすさと態度のあたたかさがどのような影響を与えるのかを明らかにすることを目的に行った.その中で年齢との関連についても検討した.髄液検査のIC口頭説明場面について,説明表現2種類(わかりにくい/わかりやすい),態度2種類(冷たい/あたたかい)を組み合わせ,4種類のビデオを作成した.そのいずれか一つを642名の健康な協力者(若年層237名,中年層200名,高年層205名)に見せ,理解度や評価を調べた.その結果,1) 患者の情緒は医師の態度から影響を受け,態度があたたかいと評価が上昇するが,説明表現からも影響を受けており,説明表現がわかりやすいと安心感や満足度が高まった,2) 患者の理解は医師の説明表現のわかりやすさによって影響を受けるが,態度も関係しており,説明表現がわかりにくいうえに態度が冷たいと理解度が低下した,3) 意思決定に及ぼす説明表現や態度の影響は患者の年齢層によって異なり,若年層は説明表現のわかりやすさが,中高年層では態度のあたたかさがより大きな影響を与えていた,4) 年齢による差は理解や情緒にも見られ,若年層は説明表現に,中高年層は態度により大きな影響を受ける傾向が見られた,などの結果を報告した.ここから,ICにおける医師の口頭説明には,説明表現のわかりやすさと態度のあたたかさがともに重要であると考えられた.