著者
山岡 航
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 社会科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSHU; Journal of Nagoya Gakuin University; SOCIAL SCIENCES (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.177-208, 2021-03-31

譲渡された債権について債務不履行があり,譲受人に譲渡人よりも多くの損害が生じた場合,この損害の賠償をそのまま認めてよいかには,一考の余地がある。ここでは,特に,債務者が債権譲渡によって不利益を被ってはならないという原則との関係が問題になる。本稿では,ドイツ法を参照し,損害賠償の範囲に関して保護されるべき債務者の利益の有無を検討した。その結果,債務者の利益としては,損害額に関する抽象的なもの,損害発生への対処可能性に関するもの,損害の範囲に関する具体的なものの3 種類があり,後二者については,それぞれ,債権譲渡にともなう不利益の禁止,契約自由の原則から要保護性が認められることを示した。これにより,債務者が負担する損害の範囲は,譲渡人との契約を基礎に決定されることになる。このことは,債務者と譲渡人との間の契約の効力が譲受人にも及んでいることを意味し,契約当事者概念の分析に接続しうるものである。
著者
山岡 航
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 社会科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSHU; Journal of Nagoya Gakuin University; SOCIAL SCIENCES (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.17-96, 2020-03-31

債権譲渡との比較において契約上の地位の移転の独自の効果とされてきたものの1つに,解除権の移転がある。しかし,債権譲渡において,債権の譲受人にその債権の発生原因である契約の解除権を認める見解もあり,契約当事者の地位にともなって解除権が移転するということには,理論的に検討の余地がある。本稿では,ドイツ法を参考に,債権譲渡の場面から,解除権と契約当事者の地位との関係を明らかにすることを試みた。検討の結果,解除権は,契約当事者の自己決定の保護を目的としており契約当事者以外の者に帰属しえないこと,および,契約上の地位の移転によって移転するのではなく,地位を譲り受けた者のもとで新たに発生することを明らかにした。このことは,契約当事者の地位を移転の対象とする一般的な理解に対して再検討の必要性を示すとともに,契約当事者の地位および契約当事者概念の分析の端緒となり得るものである。
著者
山岡 航
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 社会科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSHU; Journal of Nagoya Gakuin University; SOCIAL SCIENCES (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.123-184, 2020-07-31

債権譲渡との比較において契約上の地位の移転の独自の効果とされてきたものの1つに,解除権の移転がある。しかし,債権譲渡において債権の譲受人にその債権の発生原因である契約の解除権を認める見解もあり,契約当事者の地位にともなって解除権が移転するということには,理論的に検討の余地がある。本稿では,ドイツ法を参考に,債権譲渡の場面から,解除権と契約当事者の地位との関係を明らかにすることを試みた。検討の結果,解除権は,契約当事者の自己決定の保護を目的としており契約当事者以外の者に帰属しえないこと,および,契約上の地位の移転によって移転するのではなく,地位を譲り受けた者のもとで新たに発生することを明らかにした。このことは,契約当事者の地位を移転の対象とする一般的な理解に対して再検討の必要性を示すとともに,契約当事者の地位および契約当事者概念の分析の端緒となり得るものである。