著者
山岸 敬弘 戸川 望 柳澤 政生 大附 辰夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ITS (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.171, pp.31-36, 2008-07-21
被引用文献数
5

近年,携帯電話の普及に伴って移動通信サービスが大きく展開され,実用化が進んでいる.しかしながら実用段階まで進んでいる歩行者ナビゲーションサービスの研究は屋外環境に限ったものである.本稿では,屋外と比較して複雑な構造を持つ屋内環境におけるナビゲーションサービスに着目し,各ユーザに特化した最適な経路を提供することを目的として,ユーザの嗜好を反映させた経路探索手法を提案する.まず可視グラフを利用して対象とする屋内環境に特化したネットワークデータを提案する.次に,取り入れるべき嗜好項目を調査し,「最短経路」への要求は70%強,階段やエレベータ,エスカレータ等の「階層移動手段」に対し,特に高齢者から80%以上の要求があることを示す.これに加えて人混みを避けた経路に対し60%強の要求があった.そこで「最短経路」,「階層移動手段」さらに「混雑状況」という時間的因子を考慮した経路探索手法を提案する.提案手法の有効性を示すために実地調査を実施し,数種類に及ぶシミュレーション実験の結果から各ユーザにとって最適な経路が出力されることを示す.