著者
青木 啓成 児玉 雄二 小池 聰 長崎 寿夫 山岸 茂則 奥田 真央 谷内 耕平
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.C0312-C0312, 2006

【目的】長野県理学療法士会社会局スポーツサポート部では長野県高校野球連盟の依頼により、1999年より硬式野球大会のメディカルサポート(以下サポート)を開始し、2000年より全国高等学校野球選手権長野大会(以下長野大会)一回戦よりサポート体制を整備した。また、硬式・軟式の他公式戦のサポートも開始し、長野県の高校野球選手の傷害予防とコンディショニングに取り組んできた。今回は第87回硬式長野大会のサポート結果を分析し、1回戦からのサポート体制の必要性を明確にすることを目的とした。<BR>【長野県高校野球サポート体制】硬式は長野県下の6球場に、軟式は2球場に原則1日2名の理学療法士(以下PT)を配置し、硬式・軟式の長野大会・県大会サポートを行った。内容は選手への個別対応を原則とし、試合後のチームごとのクーリングダウンなどは行わなかった。参加PTはスポーツサポート部高校野球部門に登録した63名であり、大会事前研修は年2回実施した。研修は障害特性を考慮し、補助診断として肩関節の理学所見を中心に研修を行い、専門医の受診を推奨できるようにした。また、ストレッチ・テーピング等の実技研修も行った。<BR>【対象・方法】調査大会は、第87回硬式長野大会に参加した98校を対象とした。同大会のサポート結果を集計し、大会ベスト16前・後(以下B16前・後)の選手の利用状況と障害の特徴とサポート内容について調査し、大会期間中のサポート体制について検討した。<BR>【結果】球場のサポート室を利用した選手は延べ78名、同大会参加PTは延べ74名であった。全体のサポート実施時期は試合前22件、試合中16件、試合後39件で試合後の利用が多かった。症状は急性期41件、亜急性期20件、慢性期19件であり、主訴は安静時痛16件、運動時痛54件、疲労21件で急性期・運動時痛への対応が最も多い傾向にあった。利用・治療回数は1回が65件、2回10件、3回3件であった。障害部位は肩関節23件、腰背部12件、次いで肘関節、足関節、大腿・下腿の順に多い傾向であった。治療内容はストレッチ33件、テーピング29件、アイシング26件であり、コンディショニング指導が40件であった。B16前後で比較すると試合後利用は圧倒的にB16前に多く59%、主訴に関しては安静時・運動時痛に差はないものの疲労がB16前26%、B16後14%であった。<BR>【考察】選手の利用時期はB16前の利用者が圧倒的に多いことから、一回戦からのサポート体制の妥当性と重要性が示唆された。障害部位は過去の実績同様、肩関節、腰背部障害が多く、障害特性となっている。B16前の急性期症状・疲労が多いことは慢性・陳旧性障害が大会前に悪化、または再発している可能性も考えられる。以上により、的確なサポートを実施するために、補助診断としての理学所見が必要であり、さらには、大会期間中のみでないサポートやメディカルチェックの検討が必要であると考えられた。<BR>