著者
山崎 樹里 鳥居 隆三 土屋 英明
出版者
滋賀医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

当該年度は、卵巣刺激を施した成熟メスカニクイザルから採取された未成熟卵IF(germinal vesicle : GV、Metaphase I : MDを用いて、体外成熟培養法の確立、および体外成熟卵子の評価としての顕微授精を行った。体外成熟培養法の確立を目指し、TCM-199に10%-FBS、penicillin-strepmmycnを添加したものを基本培地とし、BDNF、GDNF、IGFI、EGF、RGF、Leptin、BstatiClの7因子添加の影響を調べた。また、ヒト可溶化羊膜(Human Solubilized Amnion products : HSAP)を培養器剤にコートして使用することで、ラミニン、ニドゲン、コラーゲンなどの影響を調べた。その結果、GV、MIどちらのステージにおいても、7因子の添加、およびHSAPの使用による体外成熟率の改善は見られなかった。また、体外成熟卵子の顕微授精の結果、高い受精率が得られた。しかし、体外培養により発生の確認を行った結果、全ての顕微受精胚が8細胞期~16細胞期で発生を停止した。そこで、体外成熟卵子の核成熟を確認するために、体外成熟卵子を固定、染色して核相を調べた結果、多くの卵子で核成熟が確認された。次に、体外成熟卵子の細胞質成熟を確認するために、ヒト卵子において、細胞質が成熟すると細胞質表面に整列する表層顆粒の分布を調べるために電子顕微鏡観察を行った。その結果、採卵時に成熟している卵子においても、表層顆粒が細胞質表面に整列しておらず、ヒトと同様の評価ができないことが確認された。また、体外成熟卵子の観察により、表層顆粒が細胞質表面に整列しているものが多数含まれていた。体外成熟卵子が顕微授精後に発生停止になることから、カニクイザルにおいて、表層顆粒が細胞質表面に整列していることは、細胞質成熟が過剰なのではないかと推察された。