著者
青木 宏史 岸 国平 山川 邦夫
出版者
千葉県農業試験場
雑誌
千葉県農業試験場研究報告 (ISSN:05776880)
巻号頁・発行日
no.20, pp.p79-88, 1979-03

1. トマトの斑点病抵抗性育種を行うために,基本的に必要な胞子の大量獲得技術を人工培養基を使用して,輪紋病と比較し乍ら検討した。2.人工培地の種類と胞子形成の関係は斑点病にはトマトジュース寒天,V-8ジュース寒天,ジャガイモ煎汁寒天で胞子形成が少量みられ,乾アンズ寒天,トマト茎葉煎汁寒天では全くみられなかった。輪紋病は各培地で胞子形成がみられたが,V-8ジュース寒天はとくに多く,トマト茎葉煎汁寒天,乾アンズ寒天は少なかった。3. BL-B光源下での胞子形成は輪紋病では光源に近いほど多く,とくに15cmで多かった。斑点病は同様な傾向は認められるものの明らかでなかった。4. 被覆材質と胞子形成は,輪紋病ではプラスチックが最も多く,軟質および硬質ガラスでもかなり多かった。斑点病は硬質ガラスおよびプラスチックで胞子形成がみられたが少なく,実用性は低かった。5. 斑点病の胞子形成と温度との関係は20~25℃で胞子形成が盛んであり,昼夜温の変温の効果はなかった。6. 斑点病の胞子形成と光質の関係は自然光およびPlant-Luxが有効であり,実用的な多量の胞子形成がみられた。さらに,単色光照射により適波長域をみると675nm附近で胞子形成が最も多かった。7. 斑点病の胞子形成と湿度の関係は湿度が低いほど好適であり,とくに空中湿度を低下させることが実用上効果的であった。8. 斑点病の胞子形成を促進するためには気中菌糸の除去および培地の切断が有効であった。9. 以上の条件を総合して各菌の胞子形成に好適な条件は輪紋病にはBL-B光源,V-8ジュース寒天培地,高湿が適し,斑点病には自然光,V-8ジュース寒天培地,低湿条件の組合わせが有効であった。培養温度は20~25℃が各々に適していた。10. 人工培養して得られた斑点病菌はトマト品種の抵抗性検定に十分な病原性を示し,実用上有効であった。