著者
川上 敬志 青木 宏史 土岐 知久
出版者
千葉県農業試験場
雑誌
千葉県農業試験場研究報告 (ISSN:05776880)
巻号頁・発行日
no.31, pp.p55-72, 1990-03
被引用文献数
1

イチゴの夜冷育苗において,処理温度,品種と処理期間,処理開始時の苗の大きさおよび体内N濃度などが花芽分化および収量様相にどのような影響を及ぼすかを検討した。1. 9月初旬から夜冷処理を開始する場合,花芽分化の誘起には10℃一定で処理するのが最も有効であった。2. 夜冷処理により花芽分化に要する日数は,高温期(8月)では長く,日長が短く,また気温が低下してきた9月初旬からの処理では短くなった。また,所要日数は品種本来の花芽分化期の早晩性と対応し,夜冷処理の時期にかかわらず早生品種ほど短縮された。3. 1シーズン2回施設を利用する場合,前期処理(第1回目)の年内収量は著しく増加したが大玉果が少なく,3~4月の後半収量は少なかった。一方,後期処理(第2回目)では大玉割合が高まり,全期収量も多かった。4. 夜冷育苗では,処理開始時の苗の大きさによる花芽分化期の早晩,開花期における生育量,頂花房の開花数および収量などの差はほとんどなく,むしろT/R率の影響が大きかった。処理終了時のT/R率が同程度であれば,大苗ほど定植後の生育および初期収量が優った。5. 夜冷培地への施肥は,苗の生育促進に対してほとんど効果はなかった。しかし,苗の体内N濃度はやや高まり,開花期もやや早まった。また,夜冷処理開始前の苗の体内N濃度は,高いほど花芽の発育段階が進んでおり,早期収量も多かった。したがって,夜冷育苗では処理開始前の窒素吸収抑制手段は不必要であり,処理期間中は根傷みを起こさない程度の施肥は有効である。
著者
青木 宏史 岸 国平 山川 邦夫
出版者
千葉県農業試験場
雑誌
千葉県農業試験場研究報告 (ISSN:05776880)
巻号頁・発行日
no.20, pp.p79-88, 1979-03

1. トマトの斑点病抵抗性育種を行うために,基本的に必要な胞子の大量獲得技術を人工培養基を使用して,輪紋病と比較し乍ら検討した。2.人工培地の種類と胞子形成の関係は斑点病にはトマトジュース寒天,V-8ジュース寒天,ジャガイモ煎汁寒天で胞子形成が少量みられ,乾アンズ寒天,トマト茎葉煎汁寒天では全くみられなかった。輪紋病は各培地で胞子形成がみられたが,V-8ジュース寒天はとくに多く,トマト茎葉煎汁寒天,乾アンズ寒天は少なかった。3. BL-B光源下での胞子形成は輪紋病では光源に近いほど多く,とくに15cmで多かった。斑点病は同様な傾向は認められるものの明らかでなかった。4. 被覆材質と胞子形成は,輪紋病ではプラスチックが最も多く,軟質および硬質ガラスでもかなり多かった。斑点病は硬質ガラスおよびプラスチックで胞子形成がみられたが少なく,実用性は低かった。5. 斑点病の胞子形成と温度との関係は20~25℃で胞子形成が盛んであり,昼夜温の変温の効果はなかった。6. 斑点病の胞子形成と光質の関係は自然光およびPlant-Luxが有効であり,実用的な多量の胞子形成がみられた。さらに,単色光照射により適波長域をみると675nm附近で胞子形成が最も多かった。7. 斑点病の胞子形成と湿度の関係は湿度が低いほど好適であり,とくに空中湿度を低下させることが実用上効果的であった。8. 斑点病の胞子形成を促進するためには気中菌糸の除去および培地の切断が有効であった。9. 以上の条件を総合して各菌の胞子形成に好適な条件は輪紋病にはBL-B光源,V-8ジュース寒天培地,高湿が適し,斑点病には自然光,V-8ジュース寒天培地,低湿条件の組合わせが有効であった。培養温度は20~25℃が各々に適していた。10. 人工培養して得られた斑点病菌はトマト品種の抵抗性検定に十分な病原性を示し,実用上有効であった。
著者
青木 宏史
出版者
千葉県農業試験場
雑誌
千葉県農業試験場研究報告 (ISSN:05776880)
巻号頁・発行日
no.22, pp.p37-43, 1981-03

1. トマトの褐色根腐病抵抗性台木を育成するため,野生種トマトLycopersicon hirsutumを導入し,国内産栽培種Lycopersicon escul entumとの種間雑種を育成し,耐病虫性および生態特性を調査した。2. 育成台木の耐病虫性は褐色根腐病,萎ちょう病,TMV,ネコブセンチュウともに優性的に遺伝することが認められ,実用的な抵抗性が確認され市販台木と同等であった。3. 育成台木は市販台木に比較し種子が大きく発芽勢がすぐれた。初期生育も旺盛で接ぎ木苗の獲保が容易であった。4. F1トマト台木の生育は育成台木がいずれも市販台木にまさった。接ぎ木栽培では市販台木と同等の生育を示した。5. 台木トマトの低温伸長性は大きく夜温3℃でも生育し台木間差はあまりなかった。高温時に発生する葉枯症は市販台木にのみ多く育成台木には発生しなかった。6. 接ぎ木トマトの収量および品質は育成台木,市販台木ともに同等のものが多かった。7. 以上から,当場で育成した褐色根腐病ほかに抵抗性の種間雑種台木は実用性がかなり高いと思われ,とくに育成4号,5号および6号が有望と思われた。