著者
西村 博睦 高須 賀豊 山本 めぐみ
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.88-94, 2006-06-20 (Released:2010-08-06)
参考文献数
6
被引用文献数
3 2

日本では, 「美」を表現するとき, “みずみずしい”という言葉を使用する。この“みずみずしい”は, Youthful, Fresh, Watery, Dewy等, 種々の「生命感あふれる美」の要素を含む形容詞であり, 場面に応じて使い分けられる。「見た目にみずみずしい肌」とは, 水分を含み潤っているように見え, 美しいツヤのある肌のことを表す。しかし, われわれが実施したコルネオメーターによる角層水分量と視覚官能評価との対応に関する研究では, 「実際に角層に水分を多く含む肌」と「見た目のみずみずしい肌」には, 相関性がほとんどなかった。そこでわれわれは, 「見た目にみずみずしい肌」を解明し, 美の要素の一つとなる“みずみずしく見せる”機能を持ったメークアップ品の開発に挑戦した。このためには, まず何をもって「みずみずしく見えるのか」, また「見えないのか」を定義する必要があった. そこで100名の女性を対象とした官能評価を実施した。その結果, これらのパネラーは「みずみずしく見える肌: 25人」と「みずみずしく見えない肌: 75人」の2グループに分けることができた。さらに「みずみずしく見えない肌」の要因に着眼し官能評価をしたところ, 乾燥して見える肌と脂ぎって見える肌の2グループに分類できた。そして, この計3グループの肌の見え方の違いを, 特殊な条件で解析した光学特性値を用いることで定性的に分類することに成功した。さらに, 肌の光学特性値がこれらのグループをなぜ定性的に分類できるのかを探った結果, 表面の形態 (ミクロ的な均一性) と明らかな関連性があることが判明した。「みずみずしく見える肌」の光学特性の知見から, 「みずみずしく見える」機能を組み入れるメーク膜の設計を行い, ファンデーションを開発するに至った。