著者
久保 中央 金子 明雄 山本 和喜
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学研究 (ISSN:13447629)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.45-54, 2015-06-01 (Released:2015-07-03)
参考文献数
43
被引用文献数
1 1

ハス(Genus Nelumbo)はアジア系のハス(N. nucifera)とアメリカ原産のキバナハス(N. lutea)に大別される.観賞用ハス品種は花蓮と呼ばれ,国内に約1000品種知られているが,それらの類縁関係はほとんど解明されていない.特に,京都府南部の巨椋池およびその干拓地から採取された巨椋池系品種は,来歴や品種間の類縁関係の多くが不明である.本研究では,巨椋池系品種94系統を含む国内の代表的花蓮品種173系統の類縁関係を,ハスSimple Sequence Repeat(SSR)マーカー25遺伝子座の遺伝的変異に基づいて解析した.前報で解析した47系統のデータを加えた合計220系統についてSSRの遺伝子型を基に近隣接合樹を作成した結果,供試系統は5つのグループ(I:キバナハス品種グループ,II:キバナハスとの種間雑種グループ,III:斑蓮を含むグループ,IV:古代蓮を多く含むグループ,V:その他のグループ)に分類された.巨椋池系品種はグループIII~Vに分布し,この品種群が遺伝的に多様な系統を含むことが示された.一方,巨椋池系品種どうしが一つのクラスターを形成する場合もあり,これらの品種は巨椋池にかつて自生していた遺伝的に近縁な集団に由来すると推察される.本研究のデータは,花蓮品種の類縁関係を整理する際の指標として,特に巨椋池系品種の花蓮品種全体における関係を示す有用な情報となり得る.