著者
山本 安里 木下 光
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.1077-1083, 2015-10-25 (Released:2015-11-05)
参考文献数
19

大阪市臨海部には今なお8ヶ所の渡船が運航している。その内の7ヶ所が大正区と他地区を渡しているものであり、住民の生活に欠かせない交通手段のひとつとして日々利用されている。本研究は、現地でのアンケート調査を実施し、大正区の渡船がどのような要因で住民の生活道路として成り立っているのか明らかにした上で、今後の都市における新たな水上交通の可能性を見出すことを目的とする。得られた結果は以下の3点である。1)人々の利用実態は7つのカテゴリーに分類され、90%の利用者が自転車に乗って渡船を使っていた。また、大正区を中心として平坦な臨海部3キロがその行動範囲であった。2)他方、10%の利用者は渡船を二つ以上、あるいは他の公共交通を乗り継いで、長距離移動していた。3)大阪の渡船は、市民の生活を支える公共交通であるとともに、地域アイデンティティとして捉えられていることがアンケート調査を通して明らかになった。