著者
足立 直之 坂井 健一郎 山本 絵理香 加藤 浩
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.C0986, 2007 (Released:2007-05-09)

【緒言】本研究の目的は,足部の筋緊張を高めた歩行が,足関節より近位の膝関節,股関節,及び体幹筋群へ及ぼす影響を動的表面筋電図解析の視点から検討することである.【対象】対象者は過去に上下肢及び体幹に機能障害の既往歴を有さない健常男性19例(平均年齢:21.9±0.9歳,平均身長:168.8±4.4cm,平均体重:61.6±5.6kg)であった.また,全例には研究の目的を説明し同意を得た.【方法】表面筋電計は,TELEMYO 2400T(NORAXON社製)を使用し,被験筋は,脊柱起立筋,外腹斜筋,腹直筋,大殿筋,中殿筋,大腿筋膜張筋,大腿直筋,内側広筋,外側ハムストリングス,内側ハムストリングス,前脛骨筋,内側腓腹筋,内側ヒラメ筋とした.自由歩行及び,右側の母趾と第2趾間の付け根にパッドを挟んだ歩行(以下,パッド歩行),最大随意収縮の各筋活動を測定した.統計学的処理は,1標本t検定を用い,自由歩行とパッド歩行との%IEMGの差を検定した.【結果】パッド歩行時の筋緊張の有意な高まりは,全歩行周期において多関節筋が単関節筋に比べ多く認められた.また,遊脚相が立脚相に比べ多く認められた.筋緊張の有意な高まりは,歩行周期の0~6%で内側ヒラメ筋,前脛骨筋,内側ハムストリングス,大腿直筋,大腿筋膜張筋,外腹斜筋,脊柱起立筋,88~92%で内側ヒラメ筋,前脛骨筋,内側広筋,大腿筋膜張筋,外腹斜筋,腹直筋において下肢遠位筋群から体幹筋群までの連鎖が認められた.前脛骨筋の筋緊張の有意な高まりは,歩行周期の大部分で認められた.【考察】パッド歩行では,自由歩行時と比べ筋緊張の高まりが足部から体幹まで連鎖しており,協同して筋緊張が高まっていた筋も認められた.そこで本研究では立脚相と遊脚相に分けて,運動連鎖の特徴を検討した.立脚相は下肢遠位部が床で固定されている状態であるため,運動連鎖の視点から見るとCKCである.CKCは多関節運動,協同運動を行い,運動連鎖を引き起こすため,足部の状態によって,足関節より近位の関節筋群にも影響を及ぼすと考えられる.正常歩行では,遊脚相は下肢遠位部が固定されておらず,自由に運動ができるため,運動連鎖の視点から見るとOKCの状態である.しかし,パッド歩行では,足部の筋緊張が高まったため,下肢遠位部の自由が阻害され,CKCに近い状態になったと考えられる.つまり,足部で高まった筋緊張は,膝関節,股関節及び体幹筋群に運動連鎖を生じさせたと考えられる.臨床において,下肢遠位部の筋緊張が高い患者は,遊脚相では常にCKCの状態である可能性が考えられる.