著者
三宅 康子 山村 卓
出版者
国立循環器病センター(研究所)
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

家族性(遺伝性)高コレステロール血症の原因遺伝子として因果関係が最もよく知られておりかつ高頻度なものはLDLレセプター遺伝子異常である。わが国に見られるLDLレセプター遺伝子異常にはどのようなものがあり、またどのような異常が多いのかについて調査してきた。LDLレセプター遺伝子の全coding領域およびプロモーター領域についてSSCP法、direct sequencing法により塩基配列の詳細を調べたところ新たな高頻度変異や、minor変異がいくつか見出された。互いに血縁のない207例の家族性高コレステロール血症ヘテロ接合体について解析を行ったところ、207例中121例(58%)にLDLレセプター遺伝子異常が見出され、合計56種類の異なる変異が確認された。それらのうち、8種類の変異は比較的高頻度に見られた。それらはC317S変異(207例中6.3%)、K790X変異(6.3%)、1845+2T→C変異(6.3%)、L547V変異(3.4%)、P664L変異(2.9%)、D412H変異(2.4%)、2313-3C→A変異(2.4%)、V776M変異(2.4%)でありこれらはいずれも点変異であった。これらの変異はわが国におけるLDLレセプター遺伝子のcommon mutationであると思われる。これら8種類の変異を合わせると全体の32%を占めるところから、わが国の家族性高コレステロール血症の32%の遺伝子診断は比較的容易であると思われた。しかし残りの48種類の変異は1例(0.5%)から3例(1.5%)にしか見られず、これらのminor mutation(全体の26%)は診断が難しい。このようにわが国におけるLDLレセプター遺伝子変異は非常に多様なものであり一般的には遺伝子診断は難しいと思われる。症状と変異の関連については、LDLレセプター活性を正常の20〜30%残しているtypeの変異ではnull typeのものに比べて臨床症状がmildであった。全coding領域の塩基配列を調べても変異が見られない症例は207例中86例(42%)あり、これらの遺伝的高コレステロール血症は、LDLレセプター遺伝子以外の遺伝素因に基づくものと思われる。これらがどのような遺伝素因によるものであるのか、考えられる高コレステロール血症素因について調査予定である。