著者
木村 研一 矢野 忠 山田 伸之 今井 賢治 廣 正基 渡辺 一平
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.279-291, 1998-09-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
46

皮膚交感神経機能に及ぼす鍼刺激の効果を検討するためにSSR (sympathetic skin response) 、SFR (sympathetic flow response) 及び手掌部の精神性発汗量を指標に検討すると同時に各指標間の関連性についても併せて検討した。被験者は健康成人男性10名、平均年齢24.7±3.1歳 (mean±SD) とした。実験は無刺激対照群 (以降、対照群) と鍼刺激群を設定し、同一被験者を対象とした。SSRは記録電極を左手掌部中央に、基準電極を同側中指爪上部に貼付し、SFRはレーザードップラー血流計のプローブを左示指指腹に装着した。精神性発汗波はハイドログラフを用い、右手掌部に1cm2のカプセルを装着した。各指標は同時測定し、電気刺激は前額部正中線上に刺激間隔および刺激強度をランダムに変更して行い、各反応を誘発し。記録した。尚、対照群は安静負荷前後、鍼刺激群は鍼刺激前後で測定を行った。鍼刺激は右側の合谷穴にステンレス鍼 (セイリン化成) を刺入し、鍼響を得た後1Hzの雀啄刺激を1分間行った後に、10分置鍼した。結果は以下の通りであった。 (1) SSR、SFR及び手掌部の精神性発汗波はHabituationを起こすことなく記録できたが、各々の相関関係は小さかった。 (2) SSR及び精神性発汗量は鍼刺激後有意に抑制されたが、SFRは無刺激及び鍼刺激の両方で抑制された。以上のことから鍼刺激は皮膚交感神経機能を抑制する作用があることが示唆された。