著者
山田 佳太
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.348-348, 2016 (Released:2016-04-01)
参考文献数
2

免疫グロブリンIgGとFc受容体(FcR;免疫グロブリンFc部位に対する受容体)の相互作用は,免疫応答を活性化あるいは抑制するシグナルを免疫担当細胞に伝える.IgG-FcRの相互作用の調節には,IgGのFc部におけるアスパラギン結合型糖鎖(N-結合型糖鎖)が関与している.したがって,同じ抗原を認識するIgGであっても,Fc部に存在するN-結合型糖鎖の構造により結合するFcRの分子種が変わるため,その後の免疫応答に与える影響が異なる.以上のことより,アレルギーや自己免疫疾患等の免疫異常や抗体医薬品等の作用機構を理解する上で,抗体Fc部のN-結合型糖鎖の構造が注目されている.今回,インフルエンザワクチンによって誘導される抗ヘマグルチン(HA)IgG抗体Fc部のN-結合型糖鎖が,ワクチンの効果発現に,重要な役割を担うことを明らかにしたWangらの論文を紹介する.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Pincetic A. et al., Nat. Immunol., 15, 707-716 (2014).2) Wang T. T. et al., Cell, 162, 160-169 (2015).