著者
山田 季恵 犬飼 順子 柳原 保 向井 正視
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.328-337, 2016 (Released:2016-06-10)
参考文献数
21

本研究では,セルフケアによる歯面色素沈着の阻止効果の検討を目的として,各種歯磨剤を併用したブラッシングが,外来性色素沈着に伴う歯面の色調変化に及ぼす影響を,牛歯エナメル質試料と歯科用色差計を用いて調べた.試料を研磨後,ウーロン茶,人工唾液,ムチンを混合した溶液に14日間浸漬して色素沈着を誘引し,この間1日2回,研磨剤(無水ケイ酸A)と清掃補助剤(無水ピロリン酸ナトリウム)配合の美白用歯磨剤,研磨剤を配合した低研磨性歯磨剤,または研磨剤無配合歯磨剤を使用する,および歯磨剤を使用しない4条件で,歯ブラシ試験機を用いてブラッシングした.1日1回ブラッシング前に,L*値(明度),a*値(赤み),b*値(黄み)を測定し,これらの値からC*値(彩度)とΔE*ab値(色差)を算出した.その結果,すべてのブラッシングの条件とブラッシングをしないコントロールにおいて,経日的にL値は低下し,a*値,b*値,C*値,ΔE*ab値は増加した.美白用歯磨剤の使用は,コントロール,歯磨剤の未使用または研磨剤無配合歯磨剤の使用に比較して,b*値,C*値,ΔE*ab値が有意に低く,L*値が有意に高かった.また,低研磨性歯磨剤の使用は,コントロールまたは歯磨剤の未使用に比較して,ΔE*ab値が有意に低く,L*値が有意に高かった.一方,低研磨性歯磨剤の使用と美白用歯磨剤の使用との間には,すべての色調指標に有意差は認められなかった.以上の結果から,研磨剤や清掃補助剤を配合した歯磨剤を使用したセルフケアで歯面の色素沈着は阻止されるが,その効果は歯面の色調を維持するには十分でない可能性が示唆された.