著者
山田 宗寛
出版者
佛教大学福祉教育開発センター
雑誌
福祉教育開発センター紀要 (ISSN:13496646)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.33-40, 2016-03-31

糸賀一雄と田村一二、池田太郎は、戦後間もない頃に戦災孤児や浮浪児たちを、福祉や教育によってその人格や発達を輝かせ、社会を築いていく主体となっていくことを願って近江学園を設立した。そこでは子どもや障害のある人の要求を出発点にした実践によって「この子らを世の光に」や発達保障など社会のあり方を提起し、施設や制度を立ち上げ、今日の福祉につながっている。 一方、戦後70 年となった現代にあっても、貧困や虐待、ひきこもりをはじめ福祉の課題は拡がっている。糸賀らは、福祉対象者への支援課題から、制度や施策を創造し、主体的に社会のあり方を提起した。今日の児童虐待と戦災孤児の問題を考究すると、糸賀らが見つめた社会と現代は、共通する人間の人格や発達の課題が見えてくる。 糸賀思想は、現代の社会においても、今日的に実践していくことが重要であり、すべての人がゆたかに生きる社会を実現していく社会指標といえる。糸賀一雄戦災孤児近江学園児童虐待発達保障