著者
山田 昌樹
出版者
東京大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2017-08-25

本研究では,大規模カルデラ形成時の津波リスク評価に向けたモデルケースを確立することを目的として,7300年前の鬼界カルデラ噴火によって発生した津波規模の解明を試みる.本年度は,既に所持していたアカホヤ津波堆積物コアの分析を進めた.具体的には,イベント砂層が津波によって運搬されたものであることを識別するために,堆積プロセスを推定するための粒度分析,砂層の内部構造を観察するためのCT画像撮影,そして供給源を推定するための地球化学分析を行った.また,アカホヤ津波堆積物の空白域である九州地方西岸のデータを得るため,長崎県五島列島においてハンドオーガーを用いた掘削調査を行なった.しかしながら,五島列島の沿岸域は沈降量が大きく,アカホヤ火山灰層の層準まで掘削することができなかった.津波シミュレーションについては,東京大学地震研究所の計算機で「JAGURS」というプログラムを使用した.まずは,カルデラの大きさと崩壊時間を仮定して数値計算を行い,アカホヤ津波堆積物が見つかった地点に到達するのにかかる時間と津波の高さを推定した.その結果,60分かけて崩壊した場合には,カルデラ崩壊の約150~180分後に和歌山県や徳島県,別府湾沿岸地域に3 m以下の津波が到達し得ることが明らかになった.現在は,カルデラ崩壊のパラメーターを変えながら繰り返し数値計算を実施している.加えて,火砕流の流入による津波シミュレーションにも取り掛かり始めている.