著者
山田 満
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

2004(平成16)年度は、本研究課題の最終年度ということで、4月にインドネシア、11月に東ティモールを訪問して最終的な聞き取り調査を行った。2004年5月にはPKO(国連平和維持活動)に従事していた日本の自衛隊が撤退した一方で、国連東ティモール支援団(UNMISET)の撤退が1年延期された。このような国際社会からの支援・プレゼンスが大幅に消失していくなかで、東ティモールの政治社会、経済状況はどのように変化しているのか、さらにはどのような状況に変化していくのかを調査した。前年度の研究実績報告書にならって、構造的要因と引き金要因の視角から整理しておきたい。(1)構造的要因:24年間実行支配をしてきたインドネシアとの関係は、同支配下における人権侵害のトラウマは依然残ってはいるものの、東ティモールの安全保障上、経済状況から考えた現実的な政策を背景に両国の関係はかなり改善されてきている。国内要因では中央と地方の経済格差、雇用機会の格差、ポルトガル語公用語問題など、社会経済的要因も絡み、次期総選挙に向けて紛争要因が高まっているといえよう。(2)引き金要因:最大の紛争要因はやはり雇用問題であろう。特に、元兵士(元独立ゲリラ)の雇用創出が進んでおらず、彼らの不満は社会混乱の不安定要因になっている。同様に若い世代の不満も高まっており、次総選挙へ向けて社会的緊張が高まっている。また、強権的な政治運営を行っている現内閣への不満が経済運営の失敗と重なった場合、東ティモールの政治社会の紛争要因はいっきに高まるものと思われる。