著者
山西 貴大 五十嵐 賢 上條 篤 松岡 伴和 増山 敬祐
出版者
Japan Rhinologic Society
雑誌
日本鼻科学会会誌 (ISSN:09109153)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.1-7, 2012 (Released:2012-05-22)
参考文献数
21

浸潤型副鼻腔真菌症は,骨破壊や病変の眼窩内および頭蓋内浸潤により容易に重症化しうる疾患である。その予後は悪性腫瘍と同様に悪く,かつ鑑別診断が非常に難しい場合がある。今回我々は,右眼窩内浸潤を呈し上顎癌との鑑別を要した浸潤型副鼻腔アスペルギルス症例を経験したので報告する。症例は糖尿病性腎症と脳梗塞の既往のある80歳男性。主訴は頭痛であったが,当科初診時の血液検査にて腫瘍マーカー(SCC・CYFRA)の上昇が認められた。またCT,MRIで右上顎洞に,骨破壊と右眼窩内浸潤を伴う腫瘤状陰影を認めた。検査結果から悪性腫瘍を強く疑い,診断確定を目的に内視鏡下生検を施行したが,生検肉芽組織内にアスペルギルス類似構造を持つ菌糸の組織内浸潤を認め,さらに血液検査でβ-Dグルカン値の異常高値とアスペルギルス抗原陽性が判明した。以上からアスペルギルスを原因とする浸潤型副鼻腔真菌症の確定診断に至った。糖尿病性腎症を考慮し,重度腎機能障害患者に対して安全に使用できる抗真菌薬ボリコナゾールにて直ちに治療を開始したが奏功せず,全身状態の悪化と患側眼症状の増悪が進行し永眠された。浸潤型副鼻腔真菌症の中には,副鼻腔悪性腫瘍がより強く疑われるような,診断が難しい症例が存在する。従って浸潤型副鼻腔真菌症を考える場合,早期診断確定のためには積極的な内視鏡下生検が必須で,それが早期治療ならびに予後改善につながる。