著者
佐藤 由紀子 山﨑 智子 内堀 真弓 大木 正隆 本田 彰子
出版者
一般社団法人 日本がん看護学会
雑誌
日本がん看護学会誌 (ISSN:09146423)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.5-13, 2011 (Released:2016-12-27)
参考文献数
20
被引用文献数
3

要 旨本研究の目的は,神経膠腫の外科的治療後に高次脳機能障害を有した患者の生活の再編成の体験構造を明らかにすることである.初発の神経膠腫の手術後,外来通院中で,みずからの経験を語れる計10名の患者を対象に個別面接調査を行った.生活の再編成を構造的にとらえるため,現象学的アプローチの方法論を基に,A Giorgiの記述的現象学的方法を参考にし分析した.分析の結果,16の構成要素が得られ,さらに「高次脳機能障害の受け止めと対応」といった視点で4テーマが明らかとなった.生活の再編成の構造は,〈高次脳機能障害を伴う行為により生じた異和感〉を意識し,〈障害を目の当たりにした感情の揺さぶられ〉をともないながら現状を受け止め,さらに,自分なりの〈障害を持っても生きられる術の探究〉により新たな生活のしかたを見出し,これから先のことを現実的に考えだすことによって〈垣間見える将来〉に至るということであった.神経膠腫の患者は,退院後,特に他者との交流において異和感を感じるが,高次脳機能障害を有したことで,その異和感をすぐに疾患や障害と関連づけて思考することに時間を要し,そのために生活の再編成に難渋するという特徴があった.また,常に再発の不安もいだいており,障害と併せて将来を不確かにしていた.患者が社会の中で孤立せず,主体性ある人生を送るためには,看護師が患者の社会的な人間関係へ一歩踏み込んで人々に理解と支援を働きかける必要がある.