著者
木村 容子 黒川 貴代 永尾 幸 山﨑 麻由子 杵渕 彰 佐藤 弘 伊藤 隆
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.228-235, 2015 (Released:2015-11-05)
参考文献数
21
被引用文献数
4

不眠に補中益気湯が有効であった7症例を経験した。内訳は,補中益気湯を就寝前に服用した2例,補中益気湯の服用のみで不眠が改善した3例,補中益気湯を追加した2例であった。全症例において「浅い眠り」の訴えがあり,疲れやすい・食後の過度の眠気・日中の眠気など気虚による所見を認めたが,食欲不振などの「胃腸症状は顕著でない」ことが共通していた。また,7例のうち5例では補中益気湯により朝の目覚めが改善した。不眠に用いられる酸棗仁湯と帰脾湯は,いずれも気と血を補う処方であるが,帰脾湯は脾胃や心を補う生薬を多く含み,より虚証に用いるべきと考えられた。疲れやすい・食後の過度の眠気・日中の眠気など「気虚による症状が顕著」であるにもかかわらず,動悸・胸騒ぎ・驚きやすい・健忘・貧血・出血など「心の異常による血虚の症状に乏しい」場合には,浅い眠りや朝の目覚めの改善に補中益気湯が有効であると考えられた。
著者
山﨑 麻由子 木村 容子 佐藤 弘 許田 瑞樹 神山 貴弘 能木場 宏彦 雨宮 伸幸 杉浦 秀和 荒川 洋 細川 俊彦 岩谷 周一 伊藤 隆
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.49, no.10, pp.677-682, 2016 (Released:2016-10-28)
参考文献数
26

胃もたれ, むかつきなどの上部消化管症状を伴う体重維持の困難な血液透析患者に六君子湯を投与したところ上部消化管症状, 食欲が改善しドライウエイト (DW) が増加した2症例を経験した. 症例1 : 79歳男性. 5か月前より胃もたれ, 食欲不振が出現しDW減量が必要であった. 胃酸分泌抑制薬内服にても症状は持続していた. 六君子湯の投与にて胃もたれや食欲は徐々に改善し1年間でDWは約7kg増加した. 症例2 : 54歳女性. 透析導入前は毎年夏に胃もたれ, むかつきを伴う食思不振が生じ体重が約3kg減少した. 透析導入後DWは27kgと低体重で胃酸分泌抑制薬を内服するも胃もたれを訴えた. 六君子湯の投与にて胃もたれやむかつきのほか, 食欲も改善した. 夏場の体重減少も消失しDWは2年間で約5kg増加した. 血液透析患者の上部消化管症状, 食欲不振を伴う体重減少に対して六君子湯は有用な治療であると考えられる.
著者
雨宮 伸幸 水谷 美保子 梨本 友美 川口 絢美 岩谷 洋介 能木場 宏彦 山﨑 麻由子 杉浦 秀和
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.243-249, 2023 (Released:2023-06-28)
参考文献数
25

腹膜透析(PD)関連腹膜炎はPD患者にとって重要な合併症であり,セファロスポリン系抗菌薬は初期治療に選択され得る薬剤である.86歳女性,腎硬化症による慢性腎臓病のためPDを導入.PD導入5か月後に細菌性腹膜炎を発症し,セファゾリン(CEZ)1g,セフェピム(CFPM)1g/日の腹腔内投与を開始した.腹膜炎は改善傾向となるも第5病日から意識障害が出現した.頭部MRIで原因となる異常を認めず,脳波検査で三相波を認め,抗菌薬関連脳症(AAE)が疑われた.第5病日CEZ中止,第6病日CFPMをメロペネムに変更し,意識障害は徐々に改善し第16病日には清明となり,第29病日に退院した.PD患者に発症したAAEの報告は限られており,さらに推奨される腹腔内投与量でのAAEの既報はない.しかし,PD患者ではCFPMの除去効率は悪く,用量を調節し腹腔内投与を行った場合でもAAEには注意が必要である.
著者
山﨑 麻由子 木村 容子 佐藤 弘
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.273-277, 2014 (Released:2015-03-30)
参考文献数
14

強い気虚や不眠,抑うつを呈する患者に対して随証治療を進めて加味帰脾湯を投与したところ,月経前症候群(PMS)の精神症状だけでなく,月経痛も軽減した3症例を経験したので報告する。症例1は26歳女性で月経前のイライラ,乳房痛,月経痛を訴えていた。疲労感などの気虚が強く不眠も認めたため加味帰脾湯を処方したところ,不眠と倦怠感の改善とともにPMS 及び月経痛も軽快した。症例2は38歳女性で疲労倦怠感が強く,不眠,月経前のイライラを認めたため加味帰脾湯を処方した。倦怠感の改善に伴いPMS 及び月経痛も軽快した。症例3は31歳女性で膀胱炎を繰り返し,倦怠感が強く不眠や憂うつ感もみられた。加味帰脾湯を処方したところPMS や月経痛の軽快だけでなく膀胱炎も再発していない。加味帰脾湯は帰脾湯に柴胡・山梔子を加味した処方である。気虚が強い患者で不眠や抑うつ傾向があり,PMS や月経痛を訴える場合に有効であると考える。