著者
岡井(東) 紀代香 薙野 晴美 山田 香 岡井 康二
出版者
The University of Occupational and Environmental Health, Japan
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.359-368, 2006-12-01 (Released:2017-04-11)
被引用文献数
23 32

ビタミンB群はこれまでいわゆる抗酸化ビタミンの範疇に分類されていなかったが, 最近一部の研究者がビタミンB群の抗酸化ビタミンの可能性を示唆する研究結果を発表している. そこで著者らはB群に属する6種類のビタミン(B1, B2, B6, B12, 葉酸, ニコチン酸)についてそれぞれのビタミンのリノール酸の過酸化脂質の生成に対する効果を塩化アルミニウム法によって分析した. その結果これらのビタミンの作用は大まかに三つのタイプに分かれ, 第一のタイプ(B1, B2, 葉酸, ニコチン酸)は過酸化脂質の生成の初期反応を促進し, その後の生成反応を抑制した. 第二のタイプのB12は初期反応に有意の効果を示さないが, その後の生成反応を抑制した. 第三のタイプのB6はすべての期間の生成反応を抑制した. 以上の結果より, ビタミンB群において過酸化脂質の生成に対してビタミンの種類や実験条件の違いによって抗酸化作用と酸化促進作用の両方の作用を示す可能性があることが示唆された.
著者
岡井(東) 紀代香 石河 暁子 安友 小百合 岡井 康二
出版者
The University of Occupational and Environmental Health, Japan
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.311-324, 2009-12-01 (Released:2017-04-11)
被引用文献数
4 10

中国や日本では古来より乾燥した温州みかんの皮を「陳皮」と称して循環器系疾患や呼吸器系疾患の予防や改善の目的で漢方薬・生薬・薬膳料理などに利用してきた. 本研究ではこれらの陳皮の薬理効果の作用メカニズムのひとつとして抗酸化・ラジカル消去活性に注目して分析した結果, 陳皮の冷水・熱水抽出液にきわめて強い抗酸化・ラジカル消去活性が認められた. そこで水抽出液をエタノール可溶性画分と沈澱画分に分けたところ, 主要な活性はエタノール可溶性画分に認められた. そこでその活性本体に対応する水溶性・低分子性物質としてアスコルビン酸とクエン酸を仮定してそれらの陳皮水抽出液中の濃度を測定し, その濃度に対応する両者の抗酸化・ラジカル消去活性を分析したところアスコルビン酸は強い1,1-diphenyl-2-picrylhydrazyl(DPPH)ラジカル消去活性を示したが, リノール酸の過酸化脂質の生成に対する作用は弱かった. ところが, クエン酸は逆にDPPHラジカル消去活性は弱かったが, リノール酸の過酸化脂質の生成に対して強い抑制作用を示した. さらにクエン酸は微量金属とアスコルビン酸によるリノール酸の過酸化脂質の生成の促進を消去・抑制することを見出した. 以上の実験結果により陳皮の水抽出液の示す強い抗酸化・ラジカル消去活性はアスコルビン酸とクエン酸がお互いにそれぞれの作用を補完するとともに一方の物質の酸化促進作用を他の物質が消去・抑制するためであることが示唆された.