著者
長瀬 賢史 松榮 美希 森 裕美子 本多(小川) 真理子 杉谷 加代 住友 倫子 中田 匡宣 川端 重忠 岡本 成史
出版者
ウェルネス・ヘルスケア学会
雑誌
Journal of wellness and health care (ISSN:24333190)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.87-95, 2017

Organic virgin coconut oil (VCO) contains almost 50% lauric acid (LA). As lauric acid exhibits antimicrobial activity against some bacteria, VCO is thought to also possess antibacterial properties. However, it is unclear whether the antimicrobial activity of VCO is comparable to that of LA. The present study was performed to examine whether VCO demonstrates antimicrobial activity against species of gram-positive bacteria (i.e., Staphylococcus aureus, Streptococcus pyogenes, Streptococcus agalactiae, Streptococcus sanguinis, Streptococcus salivarius, and Streptococcus mutans) as well as LA by disk diffusion antibacterial test. Although LA has antimicrobial activity against S. aureus, S. pyogenes, S. agalactiae, S. mutans, and S. sanguinis, VCO has antimicrobial activity against S. pyogenes, S. agalactiae, S. mutans, and S. sanguinis, but not S. aureus. Furthermore, the antimicrobial activities of VCO against several Streptococcus species were weaker than those of LA. We further compared the antimicrobial activities of VCO and LA against Streptococcus pyogenes by antimicrobial test involving the inhibition of microbial growth in broth medium. While > 4.4 mM VCO was capable of exhibiting an antimicrobial effect againstS. pyogenes, the same effect was demonstrated by as little as 0.18 mM LA. Furthermore, > 0.88 mM LA, but not VCO, was able to eliminate S. pyogenes completely. We also confirmed thatLA could eliminate bacteria within 10 minutes, and the number of bacteria did not increasefor 2 hours. On the other hand, the addition of VCO did not decrease the number of bacteria.In addition, scanning electron microscopic (SEM) analysis indicated that the antimicrobial activity of LA is mediated by a bactericidal mechanism, whereas VCO functions by inducing bacteriostasis. Taken together, we found that VCO has antimicrobial properties against some strains of bacteria belonging to the genus Streptococcus, but not Staphylococcus aureus or some gram-negative bacteria. These findings suggest that the antimicrobial spectrum of VCO differs from that of LA. We also found that the antimicrobial effect of VCO is mediated by bacteriostasis, and not a bactericidal mechanism as observed for LA.オーガニックヴァージンココナッツオイル(VCO)は、およそ 50% ものラウリン酸を含有している。ラウリン酸(LA)は、いくつかの細菌種に対して抗菌作用を呈することから、 VCO も抗菌作用を有すると考えられている。しかし、VCO がラウリン酸と同等の抗菌効果を示すか否かは明らかではない。今回我々は、VCO が LA と同等に数種類のグラム陽性細菌に対する抗菌作用を示すかディスク法を用いて検討した。LA は、黄色ブドウ球菌、A 群化膿性レンサ球菌、B 群レンサ球菌、ストレプトコッカス・ミュータンス、ストレプトコッカス・サングイニスに対する抗菌効果を示したが、VCO は、黄色ブドウ球菌に対する抗菌効果を有さず、残りの菌種に対する抗菌効果も LA と比べて効果は弱小であった。次に我々は A 群化膿性レンサ球菌を用いて液体培地での細菌培養系における VCO および LA に対する増殖抑制効果について比較検討を行った。その結果、VCO では 4.4 mM 以上の濃度でないと抗菌効果を発揮しないのに対し、LA では 0.18 mM 以上の濃度で同等の抗菌効果を発揮した。また、LA では、わずか 10 分で細菌を死滅させる一方、VCO は死滅させないことを見出した。また、走査型電子顕微鏡による観察で LA による抗菌効果は菌体破壊による殺菌効果によるものに対し、VCO は、菌体破壊のない静菌効果によるものであることを見出した。以上より、VCO が一部のレンサ球菌属に対して抗菌効果を示し、黄色ブドウ球菌には抗菌効果を示さないこと、VCO による抗菌効果が静菌効果によることを明らかにし、VCO の抗菌効果が LA と異なることを示唆した。
著者
岡本 成史 山田 博司
出版者
独立行政法人医薬基盤研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

インフルエンザワクチンの経鼻接種は、粘膜表層への抗インフルエンザIgA抗体の産生を誘導し、インフルエンザウイルス感染における交叉防御効果に関与すると考えられている。しかし、実際に抗インフルエンザIgA抗体がこの交叉防御効果に関与する直接的な証明はほとんどなされていない。そこで、我々は、昨年度よりインフルエンザワクチンの粘膜免疫により抗ウイルスIgAモノクローナル抗体を作製し、その抗体の抗ウイルス交叉防御効果の可能性について検討を行った。H3N2型のAインフルエンザウイルス広島株に対する抗ウイルスIgAモノクローナル抗体を採取し、その交叉防御効果について検討したところ、同抗体が広島株以外の複数のH3N2型株に対する交叉性の抗ウイルス中和活性を有することを明らかにした。IgA抗体は、モノマー及びポリマーと形態に多様性を有することから、同抗体のモノマー、ポリマーの形態別による抗ウイルス中和活性の変化の有無を検討した。その結果、ポリマーの形態の方がモノマー形態よりも各ウイルス株に対する交叉反応性の中和活性が数倍以上高いことを明らかにした。次に交叉反応性の中和活性に作用する抗原認識部位についてエスケープミュータントを用いた解析を用いて検討したところ、ヘマグルチニン(HA1)のIgG抗体結合部分と推定される210番目のアミノ酸が関与することを示唆した。以上の結果から、IgA抗体が交叉反応性の中和活性を有すること、その交叉中和活性を効果的に作用するためにポリマーの形態が重要であることを明らかにした。