著者
岡本 至
出版者
東京大学社会科学研究所
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.109-139, 2005-02-07

1990年代の「金融ビッグバン」は,日本の金融システムの抜本的自由化を図り,自由で公正でグローバルな金融市場を創出することを目指したものだった.しかし現在,証券市場の停滞や銀行の不良債権問題などに見るように,改革は所期の目的を果たしていない.これはなぜか,論文は,ビッグバン失敗の原因を,改革が証券業の自出化に留まり銀行部門への政府の保護が継続したこと,そして政府の証券市場に対する場当たり的介入にあることを確認する.その上で論文は,この問題は,改革が大蔵省証券局のイニシアティブによる「ボトムアップの改革」であったこと,大蔵省解体後,政治家が金融行政に介入するようになったこと,という金融ガバナンス上の問題に起因していると結論する.