著者
中村 かれん
出版者
東京大学社会科学研究所
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3/4, pp.184-205, 2006-03-28

日本の聴覚障害者を代表する団体は,政府の利益を推進するよう設計された法的環境のなかで単に活動しているというだけでなく,さらに進んで,システムを自己の利益のために操作することにも成功している.この団体は,政治権力による統制を避けるために,団体をアメーバのように細分化し,団体構造の柔軟性を保ってきた.本論文は,日本の市民社会構造の中での政治権力とそれに対する抵抗の問題を取り上げる.
著者
岡本 至
出版者
東京大学社会科学研究所
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.109-139, 2005-02-07

1990年代の「金融ビッグバン」は,日本の金融システムの抜本的自由化を図り,自由で公正でグローバルな金融市場を創出することを目指したものだった.しかし現在,証券市場の停滞や銀行の不良債権問題などに見るように,改革は所期の目的を果たしていない.これはなぜか,論文は,ビッグバン失敗の原因を,改革が証券業の自出化に留まり銀行部門への政府の保護が継続したこと,そして政府の証券市場に対する場当たり的介入にあることを確認する.その上で論文は,この問題は,改革が大蔵省証券局のイニシアティブによる「ボトムアップの改革」であったこと,大蔵省解体後,政治家が金融行政に介入するようになったこと,という金融ガバナンス上の問題に起因していると結論する.
著者
広田 照幸
出版者
東京大学社会科学研究所
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3/4, pp.137-155, 2006-03-28

本稿は,戦後日本において,歴史社会学的な観点から教育の諸問題を考察した研究の成立と発展をたどり,課題を検討する.1950年代には社会学的な歴史研究の4つの方向が存在した.しかし,1950年代後半からの高度成長によって,それらは途絶した.代わって,1960年前後に歴史研究に着手した若い教育社会学者たちは,機能主義的近代化論に依拠した研究を始めた.それは,当時の教育の課題と密接に関わった歴史研究であった.近代化が達成された後の1970年代半ば~1980年代には,教育社会学者たちは「学歴主義」に注目することで,行き詰まりを免れ,現代社会と密接に関わる歴史研究をまとめることができた.1990年代には教育の歴史社会学の研究成果は量的に増加した.そこでは,これまでの研究がより各論的に追求されるとともに,ポストモダン論などに刺激された言説研究や社会史研究が新たに登場した.しかし,学歴主義の風化,ポストモダン論の変質,大胆な教育改革などの社会の変化は,歴史研究の現代的意義を希薄なものにしてしまった.教育の歴史社会学は,現代社会の変化をふまえた,新たな問題の立て方を必要としている.
著者
愛敬 浩二
出版者
東京大学社会科学研究所
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5/6, pp.3-26, 2005-03-30

英語圏の法哲学やイギリスの憲法理論においては一般に,「法の支配」の多義性・論争性が強調されるので,「法の支配」を「善き法の支配rule of good law」と混交する考え方は消極的に評価される.他方,日本の司法制度改革を理論的に主導した佐藤幸治の議論の特徴は,「法の支配」それ自体が本来的に「善きもの」であるかのように語る点にある.この語り口を可能にするのが,「法の支配」と「法治主義」の法秩序形成観における差異を強調し,前者の優位を論ずる佐藤の独特な「法の支配」論である.本稿は,戦後公法学の論争上に佐藤の「法の支配」論を位置づけた上で,現代イギリス憲法学の理論動向を参考にしながら,佐藤の憲法学説を批判的に検討する.そして,佐藤の議論のように,政治道徳哲学への越境を禁欲し,法理論の枠内で「法の支配」を厳密に概念構成する学説が孕む問題性を明らかにする.
著者
宇野 重規
出版者
東京大学社会科学研究所
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3/4, pp.153-172, 2011-03-15

本稿は「労働」と「格差」について, 政治哲学の立場からアプローチする. 現代社会において, 労働は生産力のみならず社会的なきずなをもたらし, さらに人々に自己実現の機会を与えている. 対するに格差は, 社会の構成員の間に不平等感や不公正感を生み出すことで, 社会の分断をもたらす危険性をもつ. このように労働と格差は, 正負の意味で政治哲学の重要なテーマであるが, これまでの政治哲学は必ずしも積極的に向き合ってこなかった. その理由を政治思想の歴史に探ると同時に, 現代において労働と格差の問題を積極的に論じている三人の政治哲学者の議論を比較する. この場合, メーダが, 政治哲学と経済学的思考を峻別するのに対し, ロールズは, ある程度, 経済学的思考も取り入れつつ, 独自の政治哲学を構想する. また, 現代社会が大きく労働に依存している現状に対しメーダが批判的であるのと比べ, ネグリのように, あくまで労働の場を通じて社会の変革を目指す政治哲学もある. 三者の比較の上に, 新たな労働と格差の政治哲学を展望する.
著者
宇野 重規
出版者
東京大学社会科学研究所
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3/4, pp.21-37, 2008-03-14

戦前はジャーナリスト,戦後直後は労働運動指導者として知られた鈴木東民(1895-1979)は,1955年以降,3期12年にわたって釜石市長をつとめた.本稿は,釜石市長としての鈴木東民の仕事を,歴史的な視点から再評価することを課題としている.鈴木東民市政の力点は,道路や学校など地域社会の基盤整備と,広報等を通じての,市民間の交流と対話の空間の創出にあった.本稿ではこれらの政策を,<地域に根ざした福祉政治>,および<開かれた土着主義>として分析する.本稿の最終目的は,釜石市にとってだけでなく,およそ近代日本史における鈴木東民とその市政の意義を再評価することにある.
著者
阿部 彩
出版者
東京大学社会科学研究所
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.13-30, 2014-05-08

特集 福井県における生活保障のガバナンス本稿は、福井県における大規模アンケート調査のデータを用いて、社会的交流(家族を含む他者とのコミュニケーションや付き合い)、社会的サポート(情緒的および手段的サポート)、社会的参加(地域活動やボランティア活動など)の3つの次元における社会的孤立について分析を行ったものである。そして、年齢や性別、家族構成、結婚状況、就労形態、離職経験、学歴をコントロールした上で、福井県への移住者と福井県生まれの人に社会的孤立となる確率に違いがあるかを分析したその結果、社会的交流においては、女性において、福井県生まれの人に比べて、福井県に移住してから20年未満の人、および30年以上の人は、高い確率で孤立状況となることがわかった。この関係は、男性においては見られなかった。社会的サポートについては、福井県生まれとそうでない人の間に有意な差はなかった。しかし、社会的参加については、男性のみにおいて福井県に移住してから20年未満の人は約2.5倍から2倍の確率で孤立するリスクが高かった。This paper analyzes three types of social isolation (1. Communication, 2. Social support, 3. Participation) using a large-scale micro-data of Fukui Prefecture in Japan. The results indicate that divorcees, those living alone and migrants from other prefectures face a significantly higher risk of social isolation even after controlling for age, gender, socio-economic status, and household structure. The migrant women face higher risk for lacking communication with others, while migrant men face higher risk of lack of social participation compared to natives of the Fukui Prefecture. The analysis shows that there are different risk factors for different types of social isolation and that moving from other prefecture, even after many years of residence, still pose risk of social isolation.
著者
高橋 陽子 玄田 有史
出版者
東京大学社会科学研究所
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.29-49, 2004-01-31

20万人に達する高校中退者および中学卒非進学者の労働市場には,高校卒以上に就業環境の悪化が予想されるものの,その実像は明らかでない.本稿では35歳以下の無業者に関する調査を用いて実証分析し,高校中退者は卒業者に比べて,明らかに学校をやめた直後に正社員となる確率が低いことを確認した.ただしそれと同時に,中退だから正社員になりにくいという傾向は,年齢を経るに従って解消されていくこともわかった.さらに中退者は学校をやめた直後に正社員となりにくいが,正社員となった後の就業継続でみれば,高校や中学の卒業者との違いは存在しないことも発見された.中退者が正社員としての就業が困難なのも,継続志向の弱さや認知能力といった資質のせいではなく,高卒以上に本人能力や志向に適った就業機会に出会いにくいことの結果である.
著者
宇野 重規
出版者
東京大学社会科学研究所
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.153-172, 2011

本稿は「労働」と「格差」について, 政治哲学の立場からアプローチする. 現代社会において, 労働は生産力のみならず社会的なきずなをもたらし, さらに人々に自己実現の機会を与えている. 対するに格差は, 社会の構成員の間に不平等感や不公正感を生み出すことで, 社会の分断をもたらす危険性をもつ. このように労働と格差は, 正負の意味で政治哲学の重要なテーマであるが, これまでの政治哲学は必ずしも積極的に向き合ってこなかった. その理由を政治思想の歴史に探ると同時に, 現代において労働と格差の問題を積極的に論じている三人の政治哲学者の議論を比較する. この場合, メーダが, 政治哲学と経済学的思考を峻別するのに対し, ロールズは, ある程度, 経済学的思考も取り入れつつ, 独自の政治哲学を構想する. また, 現代社会が大きく労働に依存している現状に対しメーダが批判的であるのと比べ, ネグリのように, あくまで労働の場を通じて社会の変革を目指す政治哲学もある. 三者の比較の上に, 新たな労働と格差の政治哲学を展望する.This article focuses on the problem of labor and inequality from the perspective of political philosophy. In contemporary society, labor is important not only as a source of productivity, but also as a social relationship and an opportunity for self-realization. On the other hand, inequality divides the society by aggravating the sense unfairness among its members. This shows the importance of the theme of labor and inequality for political philosophy, but these two themes haven't been fully discussed by political philosophers. The article analyses the reason of their reluctance in the history of political thought. And by comparing three contemporary political philosophers, Dominique Méda, John Rawls and Antonio Negri, it considers the future possibility of political philosophy for the problem of labor and inequality.
著者
鶴 光太郎
出版者
東京大学社会科学研究所
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.99-123, 2011

所得格差拡大の要因については, 高齢化の進展, 単身世帯の増加など世帯の「見かけ」の動きを強調する議論もあるが, 若年層での格差拡大は目立ってきており, 非正規雇用, 特に有期雇用の拡大と関連している. 有期雇用労働者が直面する格差には賃金, 教育訓練などの「処遇の格差」, 「雇用安定の格差」, 「セイフティネットの格差」があるが, こうした格差の縮小のためには, 契約終了手当・金銭解決導入等の雇用不安定への補償や「期間比例の原則」への配慮によって, 雇用安定と処遇の格差の一体的な解決を目指すべきである. また, 有期雇用, 無期雇用, 両サイドで多様な雇用形態を創出し, 連続的に繋がるような仕組みを構築することが重要だ. さらに, 格差問題への政府の積極的な関与も期待されているが, 「必要な人に必要なサポート」を原則に, 最低賃金の引上げなどよりも低所得者の・社会保険料等の負担軽減を目的とした給付付き税額控除で対応するべきである.Widening income inequality over the past decades is related to the growing use of temporary employment as well as an increase of aging and single-person households. Seniority based wage and introduction of termination payment would be effective to reduce the wage gap and compensate employment instability for temporary workers. In addition, more varieties of contract within temporary and regular employment are likely to fill the institutional gap between regular and temporary workers. Government has an important role to mitigate the problems of inequality, but its policies should be based on the principle of "necessary support for people who need most". In this sense, an appropriate policy measure for low income persons is not an increase in minimum wage but the introduction of earned income tax credit (EITC).
著者
小林 友彦
出版者
東京大学社会科学研究所
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.81-106, 2003-03-31

「国際法と国内法の関係」に関する学説の長期的な展開過程を追跡し,その蓄積と今日的意義を明らかにする.なお,国別・法系別に論じる必要がありうることに配慮し,特に国際法と日本法の関係に焦点を当てる.I.では,実行を概観する.一貫性を維持しつつ現代的法現象にも対応するために,基礎概念の再検討が必要となることが確認される.II.では,いくつかの基礎概念に関する日本の学説展開の軌跡と蓄積とを跡付ける.その結果, (1)体系間関係, (2)国内的効力, (3)国内的序列, (4)直接適用可能性に関する理論の発展には連続性があり,それらの総合的に把握し再構成させうることが示される.III.では,包摂的理論枠組みの試論として「部分連結する多重サイクル」モデルを提示する.合わせて,(1)「多元的構成」の再考,(2)国内的効力概念の再定位,(3)国家責任論との関係の再検討,という今後の研究課題を提示する.
著者
中里見 博
出版者
東京大学社会科学研究所
雑誌
社會科學研究 (ISSN:3873307)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.39-69, 2007-02-20

女性の性売買は, 深刻な性的不平等であるにもかかわらず, 今日継続されている.売買春は, その内と外の女性に対する暴力の誘発, ジェンダーの再生産, ジェンダー化されたセクシュアリティの構築という実質的な意味で性差別の制度的実践にほかならない, 売買春を「性的サービス労働」の売買とみなす「性=労働」論は, 売買春の現場で行なわれている性的使用=虐待を「サービス労働」と称して正統化するものである, 性差別・性暴力と対抗してきた性的自己決定権という人権は, 売買春に適用されて変質した.それは売買春を雇用労働とすることを否定するが, 自営業の売買春を否定できず, 合法化する働きをなしうる.しかも自営売春業の合法化は売買春による差別・被害を全社会規模で拡大することになる.元来性的自己決定権と一体であったにもかかわらず矮小化され喪失された性的人格権を復位させる必要がある.そうすることで買春行為は, 金銭で性的人格権を買い取る違法な行為と評価することができ, 例えばスウェーデンでは実現している買春者処罰法のような売買春禁止法への展望が拓けるであろう.
著者
齋藤 民徒
出版者
東京大学社会科学研究所
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.83-112, 2005-08-31

本論文では,国際人権法の近時の研究動向を「文化」という切り口からレビューする.(1)国際法研究において「文化」を語る意義がどこにあるか,(2)国際人権法とりわけ人権条約研究において「文化」を具体的にどのように語りうるか,という2つの課題を軸に近時の諸研究を概観することを通して,国際法学において「文化」概念が持ちうる可能性と問題点とを探究する.具体的には,これまでの国際法学・国際人権法学において,どのように「文化」が捉えられてきたか,従来の研究に批判的検討を加えた上で,「文化としての人権」や「文化としての条約」といった人権条約の重層的構築の様々なレベルに位置づけながら近時の各種研究を整理する.これらの作業を通じて,本論文は,「文化としての国際法」を語りうる方法としての文化概念,すなわち,国際法実践と国際法学を通じた法的世界像の構築を1つの地理的・歴史的な文化的営為として把握しうる再帰的な文化概念を近時の研究動向に見出し,今後の国際法研究に繋げることを試みる.
著者
石原 秀彦
出版者
東京大学社会科学研究所
雑誌
社会科学研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.41-85, 2006

本論文では,貨幣について明確かつ操作可能な定義を与え,その定義の下で,貨幣が市場経済において果たす役割を,交換に必要な情報の観点から論証する.本論文で用いる貨幣の定義とは,「市場交換を媒介するモノ」であり,市場交換とは,(1)もっぱら交換される財の取得を目的とし,(2)参加者の自発的な意志に基づいて行われ,(3)社会全体に比して比較的少数,典型的には2者の間で行われ,(4)個々の交換が,同じ参加者による将来の交換を前提としないという意味で,それ自体で完結しており,(5)潜在的な参加者が事前に限定されていない,という特徴を持つ財の移動・再配分のことである.不換紙幣の媒介する市場交換をイメージした「一方的な贈与の無限の連鎖」としての市場交換のモデルを考察すると,貨幣が存在しない場合,市場交換を通じて望ましい財の配分が実現するためには,交換の無限の連鎖に関わるすべての主体間で,取引の歴史全体に関する公的な情報が共有される必要がある.これに対して,貨幣が存在する場合には,「その貨幣が信頼に足りうる」限り,取引相手が貨幣を保有していることさえ知っていれば,他には何の情報がなくとも,望ましい市場交換が実現することが示される.さらに,完全な歴史の共有かまたは貨幣が必要となるのは,単発的な交換の連鎖となる市場交換に特有なものではなく,むしろ利己的な交換一般に共通するものであることが,「利己的な互酬的贈与」のモデル分析より明らかになる.むしろ,多くの「原始貨幣」が利己的ではない社会的交換の媒介として機能していたことから,何らかの理由で「原始貨幣」が社会的交換を媒介し始めた後,交換が利己的なものへと変質した瞬間が,貨幣の起源であると考えられる.In this paper, I study the role of money in market exchanges from the point of information. I define 'market exchange'as a voluntary and isolated transfer of goods among relatively a few unrelated people, aiming to get the good others have. The model of market exchanges in this paper is constructed as an infinite sequence of one-sided gift-giving, which imitate a market exchange mediated by fiat money. If there is no money, all traders share the public information of all past trades to realize the market exchange. On the other hand, people can cooperate one another without any information except whether their partner has money or not. In the model of "selfish reciprocal gift-giving game" by two selfish people to get the partner's good, it is also true that the cooperation without money needs the public information. The so-called 'primitive money'seems to have mediated social exchange among altruistic or obligated people, but it can also mediate economic exchange among selfish people and is then called 'money.'
著者
河﨑 信樹
出版者
東京大学社会科学研究所
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.221-247, 2009-02-03

本稿の課題は, 近年におけるアメリカの民間部門による対外援助の動向を, 特に財団の活動を中心に分析することである. アメリカにおいては, 民間部門が文化・芸術, 社会保障など様々な分野で大きな役割を果たしている. 対外援助の分野も例外ではない. G・W・ブッシュ政権の下でアメリカの政府開発援助(ODA)は激増したが, 政府部門の分析のみではアメリカによる対外援助の全体像を明らかにすることはできない. 本稿では, 冷戦の終焉や「同時多発テロ」の発生といった国際情勢の変化の中, 財団を含むアメリカの民間部門による対外援助がどのように推移していったのかについて明らかにする. 特に, 対外援助に積極的に取り組んできた代表的な財団であるフォード財団(The Ford Foundation)の1980年代後半以降の活動を, 援助資金が重点的に配分されたプログラム分野の変遷に著目し, 検討していく.
著者
水町 勇一郎
出版者
東京大学社会科学研究所
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.125-152, 2011

本稿は, パートタイム労働者, 有期契約労働者, 派遣労働者等の非正規労働者と正規労働者の間の待遇格差をめぐる法的取扱いについて, 比較法的な観点から分析を行い, 日本の立法論・解釈論に対する示唆を得ることを目的としたものである. 特にここでは, 正規労働者と非正規労働者の平等取扱いについて先進的に規制を行ってきたフランスと, 判例・学説による議論の蓄積が豊富なドイツを分析対象とし, そのなかでも鍵を握る概念である, 非正規労働者の不利益取扱いを正当化する「客観的な理由(合理的な理由)」に焦点をあてて考察を深めた. そこからは, ①パートタイム労働者, 有期契約労働者, 派遣労働者などの非正規労働者をめぐる問題を一体として捉え, 総合的・連続的に対策を講じることが重要である, ②「合理的な理由のない不利益取扱い(差別的取扱い)の禁止」という法原則を導入し, 「合理的な理由」の判断において実態の多様性を取り込んだ柔軟な判断をすることが適当である, ③日本的な特徴といわれているキャリアや勤続年数の違いなどはフランスやドイツにおいてもこの法原則のなかで考慮に入れられており, この法原則を日本に導入することを困難とする特殊な事情とはいえない, ④この法原則(「合理的な理由」の判断)のなかに労使合意の重要性を取り込むときにはその危険性や正統性についての考慮が必要である, といった示唆が得られた.The purpose of this article is to analyze the legal principles on the equal treatment between regular workers and non-regular workers (for example, part-time workers, fixed-term contract workers and temporary workers) and to have some lessons to Japan from the viewpoint of comparative study of law. Especially, it focuses on the contents of the objective grounds to justify different treatments between regular workers and non-regular workers in French Law and German Law. Through this work, we can observe the flexibility of the application of the legal principles on the equal treatment between regular and non-regular workers to adapt them to various situations of these workers. These analyses give some important lessons to the political and/or theoretical discussions on the revisions of the Part-Time Work Act, the Worker Dispatching Act and the formulation of a Fixed-Term Labor Contract Act in Japan.
著者
飯田 高
出版者
東京大学社会科学研究所
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.23-48, 2016-03-31

特集 社会規範と世論の形成