著者
山崎 沙織 逢坂 裕紀子 岡本 詩子
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
vol.63, pp.45-63, 2012

2009年に制定された「公文書等の管理に関する法律」の要点のひとつは、国の非現用公文書等についての利用請求権を 認め、それに基づく異議申し立てを可能にしたことにある。同法の努力義務規定により、上述の権利とそれに基づく異義申し立ては地方自治体の公文書政策にも反映される見込みだ。そこで、本研究は同法制定後の地方自治体の公文書館についての条例・規則の改訂状況を次の2点から調査した。(1)利用請求権や異議申し立てを認める改訂はあったか。(2)公文書館への意味づけを変えるような改訂はあったか。調査の結果、(1)'新規に条例・規則を制定した自治体を除き、利用請求権や異議申し立てを認める改訂は見られないこと、(2)'公文書館への意味づけは「地域の歴史・教育・文化を振興させる場」と「開かれた行政を実現させる場」に二分されるが、前者が保持される傾向にあり、この傾向が利用請求権成立の困難さに一定の影響を与えていることが判明した。