著者
首藤 勇一郎 岡村 圭造 田中 文男 則元 京
出版者
京都大学農学部附属演習林
雑誌
京都大学農学部演習林報告 (ISSN:0368511X)
巻号頁・発行日
no.58, pp.280-288, 1986-12

セルローストリプロピオネート (CTP) の1本の分子鎖について, 1残基内および連続する残基間の非結合原子間反発エネルギーを考慮したパーチュアルボンド法により, コンフォーメーション解析を行なった。X線繊維図から, CTPの繊維周期は1. 508nmと計算され, 消滅則より分子鎖方向に3回らせん軸が存在する。このように分子軸方向に3回らせん軸をもつセルローストリプロピオネートの構造は, 他のセルローストリエステル同族体 (セルローストリアセテート, セルローストリブチレート, セルローストリバレレート) が2回らせん構造を有するのに対して, 特異的である。エネルギ一計算および非結合原子間の容認されることのできない接触の有無を調べた結果, 右巻き3_1らせんに比べ, 左巻き3_2らせんの方が低いコンフォーメーションエネルギーを持つ事がわかった。考慮した16のモデルのうち, 最も可能性の高い左巻き3_2らせんのコンフォーメーションにおいては, 側鎖はらせん軸に対しほぼ垂直に伸びた構造を持つ。