著者
岡村 慎也
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.222-229, 1996 (Released:2009-10-16)
参考文献数
30

防御因子としての大腸粘液の重要性を明らかにするために, 雑種成犬12頭に慢性拘束ストレス負荷実験を行い, 消化管粘膜における粘液糖蛋白質の指標となる粘膜ヘキソサミン濃度を測定し, 大腸粘膜の粘液糖蛋白質量の変化を検討した.さらにストレスを継続しながら, 粘液合成・分泌促進作用を有するテプレノンを経口投与し, 投与後の大腸粘膜の粘液糖蛋白質量の変化を検討した.その結果, ストレス負荷によりイヌの大腸粘液糖蛋白質量は低下し, 大腸に粘膜病変を形成する傾向を認めた.またテプレノンは大腸粘液糖蛋白質の分泌を促進させ, 粘膜病変の形成を抑制する傾向を認めた.以上より, 大腸粘液は大腸粘膜を保護する防御因子として非常に重要であり, ストレス負荷により減少し, テプレノン投与により増加することが示唆された。