著者
松田 光弘 権田 厚文 藤井 佑二 勝浦 康光 冨木 裕一 櫻井 秀樹
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.1305-1308, 1998-05-25 (Released:2009-01-22)
参考文献数
12

症例は52歳,女性.柿を3カ月間にわたり毎日15個以上摂取していたが,腹痛,嘔吐が出現し近医受診.腸閉塞の診断で当院紹介され入院となった.小腸造影検査で下部小腸に閉塞がみられ,同部位の超音波検査で4.5cm大の音響陰影を伴う腫瘤を認めた.柿胃石による腸閉塞を疑い手術を施行した.回盲部より40cm口側の回腸にクルミ大の異物が嵌頓していたため,異物直上の回腸を切開し,異物を摘出した.結石分析では,タンニン酸が主成分であり,柿胃石と診断した. 胃石による腸閉塞の術前診断は難しく,開腹してはじめて診断がつくことが多い.嗜好品の入念な問診を行うことはもとより,小腸造影検査を行い,閉塞のみられた部位の超音波検査で音響陰影を伴う高エコー像が認められた場合は,胃石による腸閉塞を念頭におき,診断治療することが望ましいと思われた.
著者
伊藤 慎吾 市川 亮介 本庄 薫平 河合 雅也 田代 良彦 丹羽 浩一郎 石山 隼 杉本 起一 神山 博彦 高橋 玄 柳沼 行宏 小島 豊 田中 真伸 五藤 倫敏 冨木 裕一 坂本 一博
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
雑誌
Progress of Digestive Endoscopy (ISSN:13489844)
巻号頁・発行日
vol.84, no.1, pp.142-143, 2014-06-14 (Released:2014-06-21)
参考文献数
5
被引用文献数
1

A 68-year-old woman was admitted to the hospital with lower abdominal pain. Abdominal CT revealed a long linear high-density foreign object measuring about 3 cm long, which had penetrated the wall of the sigmoid colon. Emergency endoscopy was performed, because the patient was diagnosed as having possible penetration of the sigmoid colon by a fish bone. The emergency endoscopic examination revealed a fish bone penetrating the sigmoid colon, which was removed with grasping forceps. The removed bone measured 3 cm in length and was believed to belong to a sea bream. The patient was treated conservatively without any complications. For intestinal perforation and penetration caused by a fish bone, such as in our case, endoscopic treatment may be considered as the treatment procedure of first choice.
著者
冨木 裕一 坂本 一博 鎌野 俊紀
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.338-346, 2004-12-22
参考文献数
20
被引用文献数
1

近年わが国では大腸癌が増加しているが,その原因として食生活の欧米化により,脂肪の摂取量が増加したことが要因のひとつと考えられている.高脂肪食は肝の胆汁酸産生と分泌を亢進させ,便中胆汁酸の増加をきたす.実際に大腸癌患者の便中胆汁酸は健常者より高濃度であり,その組成も二次胆汁酸のデオキシコール酸(DCA)とリトコール酸(LCA)が多い.また,食生活の欧米化に伴い,血清コレステロールレベルの上昇も認められるようになっているが,コレステロール低値群に悪性疾患が多いことは以前より注目されている.消化管癌患者のコレステロールレベルをコントロールと比較すると,早期癌でも有意に低値を示したことから,担癌者の低コレステロール血症は経口摂取の低下や栄養状態に起因するものではなく,癌の早期から脂質代謝系に何らかの異常が生じている可能性があることが示唆された.大腸癌に関しては環境的要因が大きく作用するため,大腸癌の予防には食物や身体活動などの生活習慣の改善が重要と考えられている.しかし,それだけで予防できるとは言えないため,早い時期から定期的に検査を受けることも大切である.