著者
松本 章一 久野 美輝 山本 大介 山本 大貴 岡村 晴之
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.243-260, 2015-05-25 (Released:2015-05-22)
参考文献数
84
被引用文献数
11 9

優れた耐熱性,光学特性,および機械的性質を有する高性能透明ポリマー材料を設計するため,N-置換マレイミドと種々のスチレンおよびオレフィンモノマーの交互ならびに2:1定序配列制御型ラジカル共重合を行った.まず,これらシークエンス制御された共重合系の反応挙動を明らかにするため,末端モデルならびに前末端基モデルを用いて共重合組成曲線を解析し,モノマー反応性比を決定した.定序配列制御の発現には前末端基効果が重要な役割を果たし,前末端基効果の大きさはコモノマーの構造や重合溶媒の種類に依存した.これら交互および2:1定序配列制御型のマレイミド共重合体の熱的性質,光学特性,ならびに機械強度などの物性評価を行い,いずれの共重合体も高い熱分解開始温度や優れた透明性を示すこと,マレイミド共重合体の側鎖置換基を設計することにより広い温度範囲でガラス転移温度や機械的性質を制御できることを見いだした.さらに,共重合体の側鎖に導入したアリル基と多官能チオール化合物ならびに表面チオール修飾したシリカナノ微粒子とのチオール–エン反応によって,高い熱分解開始温度や熱変形温度を有し,かつ透明性に優れた熱・光硬化性樹脂ならびに有機無機ハイブリッド材料が設計できることを示した.