著者
三森 国敏 岡村 美和 金 美蘭
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本トキシコロジー学会学術年会 第33回日本トキシコロジー学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.24, 2006 (Released:2006-06-23)

1997年に開催された第4回医薬品に関する国際ハーモナイゼーション会議では、1種類のゲッ歯類を用いた長期がん原性試験と遺伝子改変マウスなどを用いた短期がん原性試験のデータから医薬品のがん原性は評価可能であると結論され、新しいがん原性試験ガイドラインが策定された。今までにこれらの遺伝子改変動物についての検証作業が実施されてきており、ヒトプロト型c-Ha-ras遺伝子導入トランスジェニックマウス(rasH2マウス)やp53の片側アレルをノックアウトしたマウス[p53(+/-)マウス]は遺伝毒性発がん物質に非常に感受性が高いことが示されている。さらに、rasH2マウスではPPARαアゴニストのような非遺伝毒性発がん物質に対しても感受性を示すことが報告されている。我々の研究室では、今までに多くの発がん物質についてのrasH2マウスに対する発がん感受性に関する研究およびその発がん増強機序についての研究を実施してきており、導入遺伝子の過剰発現がその腫瘍発現増強に関与しており、内因性のras遺伝子もその発がんに関連していることを見出した。さらに、その発がんには、osteopontin、 Cks1b、Tpm1、Reck、gelsolinなども関与していることを見出している。一方、2004年7月には、米国FDAは、PPARγないしα/γアゴニストの発がん性はp53(+/-)マウスでは評価できないことから、これらの医薬品の発がん性評価には従来のラットやマウスを用いた2年間がん原性試験のデータの提出を要求するという規制を開始した。しかし、γアゴニストであるトログリタゾンのrasH2マウスを用いた6ヶ月混餌投与試験を実施したところ、血管系腫瘍が6000ppm投与群(長期がん原性試験での発がん用量)で誘発され、rasH2マウスがPPARアゴニストの発がん性を検出できないわけではないことが示されている。